Original blog|土曜社オリジナルブログ|2013年

2013年

12月

26日

安倍晋三首相、朴槿恵大統領の一冊を出版

おはようございます。

 

サム・ハスキンス『Cowboy Kate & Other Stories』に加えて、プロジェクトシンジケート叢書4『世界論』も新年1月に出版すべく準備しています。

 

短い期間にやるべきことが山積していますが、大手町の新聞社で朝刊校閲をしながら叢書第2弾『世界は考える』を準備していた昨年に比べれば、協力してくれる方も増え、楽勝です。

20131226

プレスリリース

合同会社土曜社

 

安倍晋三首相、朴槿恵大統領が寄稿する一冊を緊急出版

 

 合同会社土曜社(東京・渋谷)は、国際言論組織 Project Syndicate の最新論集 2013: Reversing Gears, Project Syndicate’s Year in Review をプロジェクトシンジケート叢書4『世界論』として出版するはこびになりました。2014117日発売予定です。

 チェコの首都プラハに拠点をおくプロジェクトシンジケートは、世界の指導者・思索家が書きおろすコラムを150カ国・480余の報道機関に配信し、購読者数が7000万に達する世界最大の言論機関です。投資家のジョージ・ソロス氏も出資しています。

 叢書第4弾となる『世界論』には、国家元首級から国際機関トップまで、要人20名の論考をおさめ、共同通信の会田弘継特別編集委員の序文をかかげます。

 本文冒頭をかざるのは、元サウジアラビア総合情報庁長官トルキ王子の「イランは変わったか」。これにイランのロウハニ大統領の「わがイランの望み」が続きます。

 中盤では、いまだ首脳会談が実現しない北東アジアの主要国から、わが国の安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領が論考を並べます。

 学界からはノーベル経済学賞のスティグリッツ教授と『劣化国家』のファーガソン教授が寄稿し、さらに『石油の世紀』のダニエル・ヤーギン氏の最新コラムもおさめます。

 後半は、米マッキンゼー・グローバル・インスティテュートのバートン会長、米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長がいま注目すべき世界経済の潮流を伝えます。

以上

  • 書  名:世界論 2014年の要点
  • 著  者:トルキ・ビン・ファイサル・アル・サウド王子(元サウジアラビア総合情報庁長官)|ハサン・ロウハニ(イラン大統領)|マイ・ヤマニ(サウジアラビア反体制派知識人)|エフード・バラク(元イスラエル首相)|安倍晋三(日本国首相)|朴槿恵(大韓民国大統領)|クリスティーヌ・ラガルド(国際通貨基金専務理事)|カウシク・バス(世界銀行チーフエコノミスト)|エンリケ・ペーニャ・ニエト(メキシコ大統領)|ジャン=マルク・エロー(フランス首相)|エンリコ・レッタ(イタリア首相)|ジョージ・オズボーン(英国財務大臣)|メフメト・シムシェキ(トルコ財務相)|ジョセフ・スティグリッツ(ノーベル経済学賞受賞者)|ジョージ・ソロス(ソロス・ファンドマネジメント会長)|ドミニク・バートン(マッキンゼー・グローバル・インスティテュート会長)|ニーアル・ファーガソン(ハーバード大学歴史学教授)|ダニエル・ヤーギン(ピューリッツァー賞受賞者)|ビル・ゲイツ(マイクロソフト会長)|コフィ・アナン(前国際連合事務総長)
  • 序  文:会田弘継(共同通信特別編集委員)
  • 四六変型・192
  • 2013117日発売予定
  • ISBN978-4-907511-05-0
  • 予価1199円+税

2013年

12月

13日

サム・ハスキンスを日英共同出版

おはようございます。

 

さて、一昨日ロンドンに出張し、日英共同出版の契約を交わしてきました。すでに制作は進んでおり、新年1月に第一弾刊行を予定しています。

2013年12月13日

プレスリリース

合同会社土曜社

 

写真家サム・ハスキンスの最高傑作が甦る

 

 ハスキンス・プレス(英国・ロンドン)と合同会社土曜社(東京・渋谷)は2014年1月、南アフリカ生まれの写真家サム・ハスキンス(Sam Haskins、1926〜2009年)作品の復刊を開始します。

 復刊は、日英2社が共同で行い、第一弾にハスキンスの最高傑作『Cowboy Kate & Other Stories』(1964年)を、続けて人気作『November Girl』(1967年)、さらに出世作『Five Girls』(1962年)という順で60年代のモノクロームの三部作を刊行します。

 ハスキンスの60年代の写真集は、初版が発行されるとたちまち世界的名声を博し、ペーパーバックを含む各版がニューヨーク、パリ、ドイツのボンなど各地で出版されました。

 日本国内にはヴィンテージ古書が少数流通し、一冊あたり数万円で取引されるなど人気を呼んできましたが、このたびハスキンス・プレス監修のもと、高い技術力を誇る大日本印刷株式会社(東京・新宿)が印刷を担当し、日本での出版が半世紀越しで実現します。

 とりわけ人気の高い『Cowboy Kate & Other Stories』は、2006年に米リッゾーリ社(Rizzoli)が構成をかえたディレクターズカット版として再刊しましたが、今回の日英国際版は構成、タイポグラフィ、ブックデザインなどすべてにわたり60年代初版を忠実に再現し、判型のみ小さなペーパーバックにかえて廉価に刊行します。

 なお、出版に合わせ、未公開写真を含むオリジナルプリントの「ハスキンス展」を企画しています。また、サム・ハスキンスの子息で、ハスキンス・プレスの現オーナー、ルドウィグ・ハスキンス氏によるワークショップも開催予定です。

以上

 

[第一弾]

書  名:Cowboy Kate & Other Stories

写真とタイポグラフィ:サム・ハスキンス(Sam Haskins)

監  修:ルドウィグ・ハスキンス(Ludwig Haskins)

出  版:The Haskins Press / 土曜社

印  刷:大日本印刷株式会社

ペーパーバック版(172×112ミリ)・160頁・予価2381円(税別)

2014年1月下旬刊行 ISBN978-4-907511-04-3

2013年

10月

03日

おかげさまの3周年

おはようございます。

 

きょう10月3日で、土曜社も3周年を迎えました。

これまで支えてくださった方、温かく見守ってくださる方々に感謝するばかりです。

 

思えば、「不思議ですてきなこと」が続々と舞いこんでくる3年間でした。

 

もっとやれることがあったようにも感じますが、自分にはこの走り方しかなかったと思うようにしています。

 

数字のうえでは、計画は、ほぼ2年遅れになっています。

ただ、スピードはともかく、前進していることはまちがいありません。

 

慌ただしい東京で、のんきさを保ちながら、どれだけゆっくり続けられるかを試しているような気分もあります。

 

創業から3年を経て、幸い意欲が持続していることを感じます。

既刊本も揃いつつあり、むしろ終わりが来ることを恐れるようになりました。

 

4年目もゆっくり意欲的にやっていきます。

応援していただければ幸いです。

2013年

9月

03日

まずいのは顔だけだ

ずいぶんご無沙汰しております。

 

さて、8月31日付け「新潟日報」朝刊で、土曜社のことが記事になりました。

 

「新潟日報」論説編集委員の星龍雄さんと、夏のさかりの代官山の6畳一間で交わした話が、7段で紹介されています。

* 

ちょっと話が飛びます。

 

太平洋戦争の敗戦時に首相を務めた鈴木貫太郎という人物には、手柄を独占することのない懐の広さがあったそうです。

 

駆逐艦を操った日露戦争の対馬沖海戦でも、敵艦2隻撃沈の戦果のうち、1つを他艦の手柄にゆずったと伝えられています。

 

その鈴木が、珍しく語気を荒らげて憤ったことがありました。

一年後輩の同僚に昇進のうえで先を越されたときのことです。

 

「自分は金鵄勲章を持っているのに彼にはない、すべてが優っているのだ。何も劣っていない、まずいのは顔だけだ」(『日本人の自伝 鈴木貫太郎、今村均』より)

 

まずいのは顔だけだ――。

 

このせりふを使ってみたいと、長く機会をうかがってきましたが、今その時がきたように感じています。

まずい顔ですが、いい記事です。

機会があれば「新潟日報」の記事をご覧いただければ幸いです。

記事をみた方から複数電話をいただきました。「大杉栄さんの本を全部」という注文もあり、代官山の狭い部屋が世間とつながっているような甘い気分でいます。
記事をみた方から複数電話をいただきました。「大杉栄さんの本を全部」という注文もあり、代官山の狭い部屋が世間とつながっているような甘い気分でいます。

2013年

8月

21日

『大杉栄追想』プレスリリース

おはようございます。

 

さて、9月新刊『新編 大杉栄追想』の準備が整いつつあります。

 

制作面では、ジャケットの細部を詰め、本文の校正を進めています。

金曜日に原稿を印刷所へ渡すことになっています。

 

宣伝面は、遅れ気味ですが、きょうと明日にわけて、各方面に情報発信するつもりです。

 

プレスリリースも発信予定です。

進捗は、追々報告したいと思います。

2013年8月22日

プレスリリース

合同会社土曜社

 

関東大震災から90年、38歳で斃れた革命児を悼む

 

 合同会社土曜社(東京・渋谷)は、来る9月16日、90年前の「甘粕事件」に思いをはせ、『新編 大杉栄追想』を出版するはこびになりました。

 1923年、90年前の東京では、7月にフランス外遊から帰国した大杉栄(当時38歳)が国内同志を組織すべく動き始めていました。子煩悩な大杉は、8月に生まれた長男ネストルの子守もよくしたと伝えられています。

 そして9月1日、関東大震災が起こります。新宿・柏木の大杉邸は、地震の被害こそ軽微でしたが、「主義者と朝鮮人暴動」の流言の飛ぶなか、大杉は16日、戒厳令のしかれた大手町の憲兵隊司令部で暗殺されてしまいます。

 「甘粕憲兵大尉が大杉栄を殺害」と大阪朝日新聞、時事新報が20日に号外を発しますが、ただちに情報統制がしかれ、半月余りにわたり一切の報道は禁じられました。

 甘粕事件から12月の虎ノ門事件へむかう不穏な情勢のもと、『中央公論』とならぶ有力誌『改造』を擁する改造社は、社屋倒壊の難にあいながら、山本実彦社長宅に編集部を移し、大杉栄を悼む16人の言論人、同志たちによる文集を発表します(『改造』1923年11月号)。

 本書は、この文集を校訂しなおし、大杉の甥である大杉豊氏による解説を加えました。

 大杉栄没後90年にあたる9月16日の命日には、故郷の新潟県新発田で森まゆみ氏の講演が、また、大杉の墓のある静岡では、大杉豊氏の記念講演が予定されています。

 さらに、40年ぶりの『大杉栄全集』が、1963年の現代思潮社版以来の新編で近刊(ぱる出版)と予告されています。

以上

 

書  名:新編 大杉栄追想

著  者:山川均(第1次共産党創始者)|賀川豊彦(キリスト教平和主義者)|和田久太郎(同志)|村木源次郎(同志)|安成二郎(元読売新聞婦人部長)|山崎今朝弥(自由法曹団創始者)|岩佐作太郎(元日本アナキスト連盟全国委員長)|内田魯庵(作家)|松下芳男(元工学院大学教授)|土岐善麿(元国語審議会会長)|近藤憲二(『大杉栄全集』編者)|馬場孤蝶(元慶應義塾大学教授)|宮島資夫(作家)|有島生馬(二科会創始者)|久米正雄(作家)

解  説:大杉豊

ペーパーバック版・184頁

2013年9月16日発売

ISBN978-4-9905587-9-6

本体952円

2013年

8月

07日

大杉栄メモリアル2013

こんにちは。

ずいぶんご無沙汰してしまいました。

 

さて、大杉栄没後90年の今年、大杉が少年期をすごした新潟・新発田では記念イベントが準備されているもようです。

 

「大杉栄メモリアル2013」

  • と き:2013年9月16日(月・祝)13:00〜16:30
  • ところ:新発田市生涯学習センター講堂 新発田市中央町5-8-47
  • 内 容:

[第一部]映画「百年の谺(こだま) 大逆事件は生きている」(藤原智子監督、90分、2012年)の上映

[第二部]講演「大杉栄と辻潤 伊藤野枝の眼で読み解く」 講師:森まゆみ(作家)

  • 主 催:大杉栄の会
  • 会 費:前売り1,000円、当日1,500円(18歳以下および障害者等付き添いの方は無料)
  • 問い合わせ:斎藤(0254-22-3372)

 

前日には、プレイベントもあるとのこと。

 

プレイベント「「120年前の新発田を読む 大杉栄の自叙伝をテキストに」

  • と き:9月15日(日)14:00〜16:00
  • ところ:新発田市西園町3丁目公会堂(自衛隊駐屯地正門前)
  • 内 容:周辺の大杉ゆかりの地を歩く
  • 会 費:500円

 

新発田の町には、今も続く老舗書店の万松堂など大杉の少年期につながる場所が多数ありますから、お時間のゆるす方は、ぜひこの機会に新発田へ出かけてみてください。

2013年

6月

28日

読後の仲間たちへ

おはようございます。

金曜日を迎えました。

 

今週はずっと葉山ですごしてきましたが、きょうから代官山に戻ります。

 

さて、この春から新しい試みとして、あるコラムに作文を寄せています。

渋谷の老舗、大盛堂書店のフリーペーパーです。

 

文章を読むことが好きで、それを人に勧めることをなりわいにしながら、作文にはいまだに苦手意識があります。

 

はっきりいって、苦行とさえ感じます。

 

もちろん、できることなら「同じ世界に属すべき人に『呼びかける』スキル」(神田昌典)を自分も手にしたい。

 

そんな魂胆もあり、コラムのタイトルは「読後の仲間たちへ」としました。

どこの誰に呼びかけるべきかもわからないまま、ともかく練習を始めています。

 

次の掲載は、7月1日号です。

すでに作文した2回分を、下記に転載しておきます。

 

 

読後の仲間たちへ(「大盛堂書店2F通信」2013年5月1日号掲載)

 

 渋谷随一の老舗書店、大盛堂書店へようこそ。新しくコラムを担当する、土曜社の豊田剛と申します。

 

 まず自己紹介をおゆるしください。土曜社は3年前の2010年秋に創業し、以来、年に3冊のペースで、ゆっくりと本を出しています。出版業は、信長よりも秀吉よりも家康だろうと腹をくくり、代官山に居を構え、養生を心がけ、75歳まで生きる気概で取り組んでいます。

 

 当コラムでは、渋谷に集う若き読書家諸兄と、読書をめぐる功罪を分かちあい、数十年後の晩年、共にニヤリと笑うことをめざします。あのころ渋谷の大盛堂で、変なコラムを読んだっけ、と。

 

 要は家康といえども、一人で長生きしたわけではないんですね。仲間と一緒に生き延びる、これが大事です。

 

 

 さて、からだが喜ぶ読書術を見つけましたので、さっそく報告します。昨日初めて試したばかりにつき、経過観察が十分でない点はご留意ください。

 

 ことの起こりは、一本の新聞記事でした。

 

 「オフィスで立って仕事をする時代がやってくる」(日本経済新聞、2013年4月14日)と題するその記事は、「座ることは体に悪い」として、デスクワークをやめた米国人ジャーナリストの取り組みを伝えています。

 

 日本の書店でも、この米国人ジャーナリストの著作『健康男』(日経BP社、2013年)が出ていますので、詳細は書物にゆずります――街の書店のおかげで、なにかと話が早くて助かります。

 

 話を戻します。「人生とは、座る椅子を決めること」ともいわれます。ところが、座る人生からそっと降りてみれば、大臣の椅子も、いばらのムシロも、ただの景色にすぎません。まるで立木が広々と自由の境地に枝を伸ばすような、何ともいい気分です。

 

 『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋、2007年)の村上春樹さんも、走ったあとは机に向かうわけで、大きなくくりでいえば、座った文体というほかない。

 

 当コラムの筆者は、身の丈190センチメートルの巨体を持て余し、小さすぎる椅子に身を縮める気分で暮らしてきました。

 

 直立二足歩行が人類を類人猿から分けた例もあります。つまり椅子からの解放が新たな進化をもたらさないともかぎらない――こうワクワクしている次第です。

 

 2カ月後の次回は、立って読み、書き、作業をした成果を報告したいと思います。

 

 

インタビュー(「大盛堂書店2F通信」2013年5月1日号掲載)

 

- 経歴を教えてください。

 1977年、滋賀県甲賀郡に生まれる。甲賀忍者の末裔と自分を見なして、三重県桑名市で育つ。2001年に慶應義塾大学経済学部を卒業。慶應義塾大学出版会、ブルース・インターアクションズ(現スペースシャワー・ネットワーク)、三井生命保険勤務を経て、2010年に土曜社を創業。

 

- 独立したきっかけは?

 新卒以来、ほぼ3年ごとに転職をくりかえし、会社勤めに向いていない性格にうすうす気づいていたところに、若い友人の編集者が上司との折りあいの悪化から退職する事件があり、彼が編集、自分は営業を担当する双頭体制でいく方向で盛りあがったあげく、勢い余った自分だけが一人独立したという経緯です。

 

- なぜ出版業を始めようと思ったのですか?

 やりたくないことを慎重に避けた結果です。テレビも持っていないし、携帯電話も好きではない。コンピューティングもモータリゼーションも、功罪あるけれども自分は嫌だなというふうに、わがままを通すうちに行く先が狭まり、もう紙の出版しかない、と。「辛抱はしても、もうとてもできないと思う以上のことはけっして辛抱しちゃいけません、それが堕落の一番悪い原因なんです」(大杉栄『自叙伝』)

 

- 独立して、出版業を始めて失敗だったなあと思ったことは?

 建築家の安藤忠雄氏が「連戦連敗」、ユニクロの柳井正氏が「一勝九敗」だとすれば、3年生の土曜社は「七戦七勝」なんです。既刊本はすべて採算にのっていますから。にもかかわらず、一つひとつの勝利が小さすぎて、食えないという苦労はあります。本は読むにも、書くにも手間がかかっていますから、一冊の本を売るにも相応の時間をかけなければと思っています。

 

- これからの目標、野望は?

 大杉栄の著作は、土曜社版だけで累計1万部に達しています。幕末の志士が2千人といわれる事例を引くなら、ことを起こすには十分な数字です。でも、本は売りっぱなしで、「真実の瞬間」は書店のレジにしかないとされている。自分はこれを変えたい。具体的には書店・図書館を始めます。

 

- 一押しの貴社の出版物は?

 坂口恭平が歌う『Practice for a Revolution』。書籍コードのCDです。日本語で「革命の練習」といいます。自分は、フランス式の大革命には賛成しません。それより家族や友達を大切にしたいなと。その点からも、「ワンコールで電話に出ること」から始まる坂口恭平さんの革命に期待しています。

 

 

読書の平和(「大盛堂書店2F通信」2013年6月1日号掲載)

 こんにちは、土曜社の豊田です。


 さて、前回は新しい試みとして、立って読み、立って書き、立って仕事を始めたことを報告しました。

 

 あれからひと月がたち、今は再び座敷に腰をおろし、机に向かう元通りの日々を過ごしています。三十数年間で座る暮らしに慣れた身体が、急な変化に驚いたのでしょう。しばらく背中をいたわる必要がありそうです。

 

 さて、気をとり直して、今回は読書とその敵について考えてみたいと思います。

 

 少し回り道しながら、話を進めます。

 

 本と出会うには、3つしか方法がないといわれます。すなわち、一に書店へ出向くこと、二に図書館を使うこと、そして三つめが、本を知っている人と出会うことです。

 

 青年時代に、本をよく知っている誰かと出会った人は幸いです。読書に通じた年長者や、本を読む同級生がこれに当たるでしょう。

 

 戦前の日本には、読書を継承するためのすぐれた仕掛けがありました。ほかでもない、書生のならわしです。ワンルームマンションはまだ発明されていませんでした。ふるさとを離れた青年は、年長者の家庭に寄寓し、寝床だけでなく同時に書棚も手に入れたのです。

 

 そのころ青年は、寂しさをまぎらわせるために渋谷をうろつく求めを感じませんでした。もちろんテレビやスマートフォンとも無縁です。

 

 エッセイストの林望氏は、『知的生活の方法』の渡部昇一氏との対談で次のように語っています。

 

 「家にいるとき、遠くのほうでにぎやかなのがいい」「それから、年をとった勤勉な女中がいて、旦那様は偉い人だと思ってくれていることがいい」と。

 

 だからこそ、大きな家に住むのが望ましいというわけです。

 

 翻って、筆者の暮らしは、知的生活の観点からみれば落第というほかありません。なにしろ事務所は六畳一間。そこに巨漢の筆者と、血を分けた熊のような弟、それに筆者の婚約者が泊まりこみ、ひしめくように暮らしているのですから。

 

 読書の敵とは、近すぎる同居者にほかなりません。

 

 アフガニスタンの反ソ連軍ゲリラの英雄マスード司令官は、行軍にも蔵書を帯同し、戦闘の合間も読書を欠かさなかったと伝えられています。比べて自分は、愛する家族の寝息にすら読書の平和を脅かされるような腹の細さ――。自慢できたものではありません。

 

 次回は、この狭く誘惑に満ちた現代東京でいかに読書の平和を確保するべきかを考えてみたいと思います。

2013年

6月

27日

勤務中にラジオ

おはようございます。

 

昨日は、土曜社の葉山保養所も一日雨でした。

 

雨をいいことに、ラジオで英国国営放送 BBC のニュースを聴きながら、ずっと室内で作業や読書をしてすごしました。

 

勤務中にラジオをかけていられる立場というのは、出版業界に入って以来、一つの成功像として心にありました。

 

少し回想をおゆるしください。

出版業界に入りたての頃のことです。

国分寺の東京経済大学での打ち合わせの行き帰りに、ときどき立ち寄る古書店がありました。

 

出版業というのは仕事の輪郭があいまいなもので、街の書店や図書館に通うことも仕事になりえます。

 

「渋谷 NR(ノーリターン)」と事務所の出先表に書いてあれば、すなわち「渋谷で書店をまわって、得意先と懇親を深めて帰宅する」と見なされます。

 

筆者にとって2社目の出版社では、レコード会社を兼ねていたこともあり、レコード店に通うことも、コンサートや映画の試写会に出ることも仕事の一つでした。

 

一日の作業をおえて帰宅するときも、「お先に失礼します」とはいいません。

代わりに「出ます」と言い残すのみ。

 

「帰る」ではなく「出る」――。

 

このことばの違いは、あんがい大きいようでした。

自分の拠点は、あくまで事務所にあるという意味がそこに含まれるのですから。

こうして出版業界で働きながら、どんどん自由が広がっていくわけですが、なぜか古書店に出入りすることだけは、ずっと後ろめたさが拭えませんでした。

 

理由を考えるに、新刊を飯のたねにしながら、新刊よりも古書のほうをおもしろく感じてしまう自分に対する危険の感覚なのかもしれません。

 

もっと下世話なところでいうと、古書店では自社商品を横流しすることができてしまうので、当然の警戒心が働いていたのかもしれません。

さて、そっと通っていた国分寺の古書店では、いつも店主が何か作業をしながら、NHK ラジオのロシア語講座を聴いていました。

 

作業のかたわら、自分のいいように語学の勉強も進む――。

それが当時、どれほどうらやましかったことか。

 

会社員だった頃は、早出をして、誰もいない朝の事務所でラジオを聴きながら作業をはかどらせたものでした。

 

土曜社では、日中ずっとラジオをかけていることができます。

 

とりたてて華々しいこともない日々ですが、望んだ方角に向かっているのかもしれないと、ふりかえっています。

2013年

6月

26日

7000人に対して700部

おはようございます。

葉山も雨が降りはじめました。

 

さて、昨年6月の『リガ案内』発売から1年がたちました。

 

ラトビア政府観光局によると、日本からラトビアへの渡航者数は昨年、年間7322人で過去最高に達し、前年比で約1500人増えたもようです。

 

『リガ案内』は当初、日本からラトビアへの渡航客は「年間2万人」という情報をもとに、その1割、すなわち2000部を売ることを企図し、初版2000部と決めた経緯があります。

 

そもそも前提とすべき母数がまちがっていたわけです。

 

『リガ案内』の売上は、4月までの実績で700部強。

企画の前提は大きく外してしまいましたが、ふしぎと渡航客の1割という見積もりは正しかったようです。

 

「本をもってリガに行ってきました」というようなお便りも届いています。

売上以上の報酬をもらっているように感じます。

2013年

6月

25日

わがままに暮らす

おはようございます。

 

さて、昨日はずっと懸案だった備品類を購入しました。

 

買い入れたのは、つぎの4点です。

 

  • モノクロレーザープリンタ
  • 姿見
  • ワイン木箱
  • 収納ボックス

 

4月以来、代官山の6畳一間から、葉山に本拠を移しつつあります。

以上の備品は、葉山で使います。

 

からだを葉山に移しながらも、備品や資料は少しずつ動かせばいいだろうと、のんきに構えてきました。ところが、この姿勢が前に向かう勢いを鈍らせていたようです。

 

結局どっちつかずの中途半端さで、葉山にいても代官山にいても、借りぐらしの気分ですごしていました。

 

物質や金銭の不足は、わりと苦にせず受け入れてしまいがちな性格を踏まえて、どこにいても我慢せずアットホームな姿勢を保つということを自分に課してきました。


必要な備品を選び、買い入れたことで、単純なようですが、本来の暮らしに近づいた気がしています。

 

 

昨日は、宅配レンタルビデオの TSUTAYA DISCAS の入会も済ませました。

 

葉山町には劇場もレンタルビデオ店もありませんが、夜の娯楽も確保し、いよいよ、わがままに仕事と暮らしをはじめてみようと意気ごんでいます。

2013年

6月

24日

関東大震災と大杉栄没後90年

おはようございます。

 

さて、今年は1923年の関東大震災から90年の節目にあたります。

関東大震災の戒厳令下、東京大手町の憲兵隊本部で扼殺された大杉栄(享年38)の没後90年でもあります。

 

この節目の年に合わせて、大杉栄全集の刊行が予告されているほか、静岡の沓谷霊園では墓前祭が、大杉の故郷ともいうべき新潟の新発田ではシンポジウムが企画されているもようです。

 

大杉栄全集は、没後まもなく編集が始まり、1925年にはアルス版が、戦後の1964年には現代思潮社版が出ています。

 

半世紀ぶりとなる2013年に全集を刊行するのは、東京四谷の〈ぱる出版〉とのこと。

シルビオ・ゲゼル『自由地と自由貨幣による自然的経済秩序』(ぱる出版、9500円、2007年)で名高い出版社です。

 

 

大杉栄没後90年の今年、土曜社では2つの企画を進めています。

 

一つは、大杉栄のめざした国際連帯をなぞってみようというわけで、最後の著作となった『日本脱出記』を英訳し、海外で販売します。

 

翻訳は、マルクスの研究者で、現在は日本に暮らし、英字メディアの記者を務めるかたわら日本近代文学を研究する米国籍のマイケル・シャワティさんに依頼しました。

 

もう一つは、戦前の総合雑誌「改造」に寄せられた同志・友人たちの大杉栄追悼論の再刊です。

 

山川出版社の『詳説日本史』はじめ高校の教科書を思いかえせば、大杉栄の「甘粕事件」は章の最後に置かれ、一つの時代の区切りとされていました。

 

また、教科書では「甘粕事件」の3カ月後に起こった難波大助の虎ノ門事件なども別の章で語られていたように思います。関東大震災と大杉栄の死が時代を画した点を強調する効果があるとはいえ、きれいに整理されすぎているきらいも否めませんでした。

 

今回の再刊が、大杉栄の死と同志たちのその後に脚光をあて、関東大震災の前後を連続する歴史としてとらえるきっかけになればと考えています。

 

近く続報させてください。

2013年

6月

23日

成海璃子さんと高橋盾さん、坂口恭平アルバムを語る

さて、本日発売の人気ファッション誌「SPUR シュプール」で坂口恭平アルバム「Practice for a Revolution」が紹介されました。

 

女優の成海璃子さんが、このアルバムを愛聴しているそうで、アンダーカバーの高橋盾さんとの対談でおすすめしてくれています。

 

ぜひチェックしてみてください。

成海さんと高橋さんの音楽談義は251ページに。
成海さんと高橋さんの音楽談義は251ページに。

2013年

6月

18日

たった一人の「大盛堂書店2F通信」

こんばんは。

 

さて、最近ブログの更新をさぼっていたせいで、いくつか報告が滞っております。

一つずつ、順に報告させてください。

 

まず今日お知らせしたいのは、渋谷随一の老舗、大盛堂書店のフリーペーパーに、当ブログの筆者が小さな連載を始めたことです。

 

フリーペーパーの名は、「大盛堂書店2F通信」。

 

同店スタッフのYさん(男性)が、おそらく一人で企画し、一人で原稿をあつめ、コピー機とはさみで手作りしている小冊子です。

 

発行は、毎月1日と15日の2回。

当ブログの筆者は1日発行号で小コラムを担当しています。

 

渋谷でご用の際は、ぜひ大盛堂書店で手にとってみてください。

2013年

6月

18日

『新アジア地政学』発売1週間

おはようございます。

新しい一週間が始まりました。

 

さて、6/10の『新アジア地政学』書店発売から1週間がたちました。

書店での売上は、書店からPOSデータを購入していないため、つかめませんが、アマゾンをみると実売94部とまずまずの出だしになっています。


アマゾンは業界シェアが10%といわれますので、市中の書店も含めて、ざっくり900部前後の売上があるとみています。

宣伝は、各メディアに出した献本・プレスリリースの反応を待っているところです。

書評状況は、つぎのとおりです。

 

あと1紙、専門紙での書評が決まっています。


また随時報告します。

プラハの本部からも「Great!」との反応で、胸をなでおろしました。
プラハの本部からも「Great!」との反応で、胸をなでおろしました。

2013年

5月

17日

『新アジア地政学』を入稿しました

こんにちは。

 

さて、新刊『新アジア地政学』の原稿を、本日ようやく印刷所に手渡しました。

 

出来日やジャケット画像などは追って報告したいと思います。

2013年

4月

15日

『世界は考える』が週刊現代で紹介されました

おはようございます。

新しい一週間が始まりました。

 

* 

 

さて、本日発売の「週刊現代」で『世界は考える』が紹介されました。

 

「世界が注目した安倍晋三論文が『発禁』になった理由」と見出しが踊る、3段1000字余りの調査記事です。

 

掲載箇所は、同誌66ページです。

 

今朝から書店にならんでいますので、ご注目いただければ幸いです。

麻生太郎副総理の「殺し文句」も気になります。
麻生太郎副総理の「殺し文句」も気になります。

2013年

4月

03日

新聞社と出版社

おはようございます。

 

さて、弊社一人きりの社員が大手町の新聞社で記事審査の仕事をはじめたことを、昨年12月にご報告しました。

 

衆議院選挙や政権交代など政治イベントが目白押しにつき人手が欲しいということで臨時に入った仕事でしたが、この3月末に無事任期を終え、区切りよく新年度に向かっています。

 

この「無事」というのは、いつわりのない実感です。

 

記事審査が紙面のまちがいを見落とせば、刷り直しや訂正記事につながります。

 

野球でいうなら、攻守交代することなく、ずっと守備についているような状態といえるでしょう。つまり、回を重ねれば重ねるほど、腕は上がりますけれども、いずれ失点せざるをえないポジションです。

 

 

4カ月間と短い時間でしたけれども、久しぶりに組織で働いてみて、一人で働く現在のすがたを一歩外から見直すことができたように感じます。

 

じっと同じ机に座っているのが苦手で会社勤めをやめたのが、3年前のこと。決められた時間にデスクに座っていなくてはいけないという不自由さの中でこそ生まれる発想もある――というのが今回の発見でした。

 

 

一人だからこそ、空気がよどまないよう、外との風通しはよくしておきたいと思っています。

 

上下のつながり以上に、とくに前後左右は開け放しておきたいなと――それがときに脇の甘さにつながるのですけれども。

 

編集も営業も自分でやりたいし、学生時分のアルバイト以来、久しぶりに書店でも働いてみたい。

 

また、業界の外との関係でいうなら、出版に隣接する分野――新聞、図書館、レコード、教育には宝のような材料が眠っているのではないか、などなど。

 

 

そんなわけで、新聞と出版のあいだで気がついたことを記しておきたいと思います。

 

思い出したときに、ゆっくり書き留めていきますから、時々おつきあいいただければ幸いです。

2013年

3月

30日

「日本経済新聞」朝刊1面サンヤツ広告

おはようございます。

 

さて、けさの「日本経済新聞」朝刊1面に『世界は考える』広告を出しました。

 

弊社初の全国広告――そもそも創業3年目にして広告を出すこと自体が初めての経験です。

 

これまで広告費を使わず、運営費を低く抑えることにかけては自信がありました。

その分、価格を安くしたいなと。

 

『世界は考える』も、初版2000部 × 本体1900円の予算のなか、広告・宣伝費は3万円しか計上していません。そして、その全額は3月20日の出版記念レセプションにつぎこみました。

 

 

人気のコラムニストで、工作社を創業した出版業の大先輩・山本夏彦氏は広告を好んだそうです。

 

氏いわく、

 

「広告が好きなのも動かないですむからである。私にセールスはできない。広告は百人のセールスマンの働きをする」(山本夏彦『私の岩波物語』)

 

 

『世界は考える』は現在、全国200余の書店で展開されています。

売れている店もあれば、初動はいま一つという店もあります。

 

100人のセールスマンを擁し、全国の書店でローラー作戦を展開する――これは直感的に、やってはいけないと感じています。

 

1冊の本を売るために100人の営業部隊が動くのとは逆に、1人で100冊の面倒をみる方が、人間は本来の力を発揮できるのではないかと。

 

そして実際、本をめぐる業界には、そんな気性の人が少なくないようでもあります。

 

ちょっと論旨が途中ですが、そろそろ外出時間が迫ってきましたので、このへんにしておきます。

 

 

日本経済新聞社によると、土曜日はいちばん新聞が読まれる日だそうです。

 

打てば響く――そんな広告だったら、効果がなくなるまで出し続けてみたいなと夢みています。

 

反響を楽しみにしたいとおもいます。

日経300万人の読者のうち、何人の眼にとまるのでしょう。
日経300万人の読者のうち、何人の眼にとまるのでしょう。

2013年

3月

20日

ドウス氏は19時に会場到着予定

おはようございます。

ごあんないの『世界は考える』出版記念レセプションが、今夜19:00に迫りました。

18:30に会場をオープンし、みなさまの光臨をお待ちしています。

幸い東京は曇19度の予報です。

 


さて、これまでに頂戴したお問い合わせから、5点ほど共有させていただきます。


「ドレスコードは?」

祝日の夜ですし、カジュアルにおこしいただければ幸いです。


「子供も楽しめる?」

だいじょうぶです。全面禁煙で、ソフトドリンクもございます。


「友人も誘いたいのだけど?」

大歓迎です。ぜひお声がけください。


「仕事帰りだけど……」

だいじょうぶです。大きな荷物は、クロークでお預かりします。


「食事は出るの?」

会場の「M」では、おいしい軽食を用意しています。また、会場の通りには、とんかつぽん太、Unice、Chano-ma などもございます。自由に出入りいただけますので、空腹時のご利用をおすすめします。

 

プロジェクトシンジケートのデーモン・ドウス氏は、19:00に会場到着の予定です。

 今夜はぜひ、国境を越えて報道機関をつなぐ言論組織と直接コンタクトをとってみてください。

 

なお、執筆者のひとり、黒田東彦氏は会場にはおこしいただけません。

氏は本日、日本銀行総裁に就任とのことです。あしからずご了承ください。

見どころとしましては、21:00 から Yu Mamiya a.k.a. DJ Baystate のプレイがあります。

 

ニューヨーク/トロントの伝説的グループ「メインソース」の中心人物ラージプロフェッサーとのコラボで鮮やかなデビューを果たした、日本ヒップホップ界の最終兵器の登場をどうかお楽しみに(説明が長くてすみません、つまりスゴイってことです)。

20:00ごろに、ある若いミュージシャンの飛び入りも企画しています。

きっと後日、鼻高く自慢できる思い出になるかと。

どうかお見逃しなく!

 

 

付けたしです。

 

会場の近辺には、代官山蔦屋書店や西郷山公園など名所もあります。

併せてお立ち寄りになることをおすすめします。

なお、会場にはティッシュペーパーをふんだんに用意しておきます。

花粉症の仲間にはつらい季節ですが、今夜は笑い飛ばしていければと。

会場では鼻水御免でお願いします。

毎日いろいろありますが、楽しい春の一夜にしたいと思いますので、お誘いあわせのうえ、にぎやかなおこしをお待ちしています。

2013年

3月

15日

『世界は考える』出版記念レセプション

おはようございます。

さて、新刊『世界は考える』出版記念レセプションをご案内します。

当日は、チェコの都プラハから、プロジェクトシンジケートのデーモン・ドウス氏もかけつけてくれます。

完全招待制で閉ざされたダボス会議が「世界の常識を生産する工場」だとすれば、非営利で垣根のないプロジェクトシンジケートは「世界の論調を方向づける広場」というべきでしょうか。

各国は、元首級から閣僚、気鋭の学者までがこぞって寄稿します。

ところが、日本からの寄稿者はごくわずかです。

日本とプロジェクトシンジケートの新たな出会いになればと今回、レセプションを企画するしだいです。

 

毎日いろいろありますが、春の一夜に楽しい時間をごいっしょできれば幸いです。


 

プラハからD・D氏がやってくる!

ウェルカムパーティ

 

叢書2弾『世界は考える』

刊行記念レセプション

supported by Project Syndicate

 

□日 時:2013/3/20(水・祝)19:00-23:00

□会 場:代官山 M 渋谷区恵比寿西1-33-18-B1F

□主 催:土曜社

□協 賛:Project Syndicate

□音 楽:Frankie Gee、杉森耕二(Rosso)、井上雄樹(eBookJapan)

□記 録:Gno Kim、Song Min Su

 

※YU MAMIYA a.k.a. DJ Baystate の特別出演決定!

 

- 入場無料

- クローク完備

- 全面禁煙

 

当日は、ふらりとお越しいただくこともできますが、会場設営の都合がありますので、Facebook で参加表明いただくか、当サイトで事前登録いただけると大変たすかります。

3/20は、黒田東彦氏が日銀総裁に就任予定の日でもあります。
3/20は、黒田東彦氏が日銀総裁に就任予定の日でもあります。

2013年

2月

28日

英文出版スタート、翻訳者をさがしています

2013年春の英文出版スタートにむけて、翻訳・校正で協力いただける方をさがしています。

 

翻訳だけでなく、「プロジェクトシンジケート叢書」および、新シリーズの編集・校正なども担当いただきます。

 

あまり報酬が充分とはいえませんので(他社比)、経験の有無よりも、いっしょに冒険してくれる方だと嬉しいです。

 

小規模なぶん、わがままに働き方をアレンジできます。学業・研究・勤務のかたわら専門性をいかしてというようなことも可能です。

 

期  間:とくになし

内  容:社会・政治・経済分野の翻訳・訳文校正(英語を中心に)

対  象:男性/女性

要  件:初回打ち合わせの際、代官山に足を運んでいただける方

報  酬:プロジェクトに応じて外注費をお支払いします

募集人数:若干名

応募方法:まずはメールで、下記担当者あてにご連絡ください。詳細は、お会いして打ち合わせさせていただきます。

応募〆切:随時

 

お心当たりの方は、まずご一報を。

また、身近にふさわしい方がいらしたら、ぜひ声がけをお願いします。

 

担当:豊田 〈とよた〉tsuyoshi.toyota [at] doyosha.com

2013年

2月

26日

安倍晋三首相エッセイを収録できなくなりました

こんにちは。

 

3月新刊『世界は考える』を昨日、校了しました。

3月5日の発売をめざして、印刷・製本に進んでいます。

1月4日に英文で発表されたエッセイ集ですから、楽しみにしていただいた方には、60日余りお待たせしております。

すごくいい出来になりますから、もう少しお待ちいただければ幸いです。

 

 

さて、納期のほかに、報告とお詫びがございます。

 

まず一つ。値段を変更しました。

予価は3000円でしたが、実際は1900円になります。

 

黒田東彦氏が次期日銀総裁と報じられて以来、注文がぐっと増えていまして、思いきって値段を下げることにした次第です。

 

 

もう一つは、お詫びです。24人の執筆者のうち、安倍晋三首相のエッセイだけを収録することができませんでした。

 

入稿前夜に、ある人物から連絡があり、収録を断念しました。

「ある人物」などというと物騒ですが、今回の安倍論文の英文発表に尽力された方です。

 

入稿直前でしたから、本には「諸般の事情で収録することができませんでした」とだけ追記しました。

 

ここでは安倍首相の論文を楽しみに待っていただいた方へ、経緯を詳しくお伝えすることで、少しでもお詫びにかえたいと思います。

 

自分も整理しきれていないところがありますので、順を追っていきます。

 

2012年

9月24日 Project Syndicate(プロジェクトシンジケート、プラハ)と弊社で「2012 Year End Series」出版契約書作成。各国の元首級や国際機関トップなど要人たちが年末年始のエッセイを執筆する恒例のシリーズ。この時点では、だれが執筆するか決まっていない。

11月16日 衆議院解散

11月26日 上記契約を取り交わし

12月11日 プラハから「2012 Year End Series」の執筆陣24名のラインナップが届く。目立つところではビル・ゲイツ氏、マイケル・サンデル教授、ナシーム・タレブ氏。日本からは安倍晋三氏(当時は元日本国首相という肩書き)とアジア開発銀行の黒田東彦総裁の2名。

12月16日 第46回衆議院議員総選挙で自民党が大勝

12月19日 自民党総裁室とファーストコンタクト。その後、総裁室から安倍晋三事務所に本件引き継ぎ。

12月25日 安倍氏が第96代内閣総理大臣に就任


2013年

1月4日 プロジェクトシンジケートが安倍論文を含む「2012 Year End Series」を世界同時発表。安倍晋三事務所とファーストコンタクト。

1月16日 東京新聞が安倍論文の「セキュリティ・ダイヤモンド構想」を大きく報じる

2月4日 安倍晋三事務所から「(日本語翻訳出版を)お断りする」との連絡。あきらめきれず、手を尽くす。ある人物へのコンタクトをプラハに依頼し、日本語翻訳のチェックを受けることに。

2月12日 プラハから翻訳チェックを通ったとの連絡。「2点ほど但し書きが必要だが日本語版出版は OK」のこと。

2月13日 ある人物と国内でファーストコンタクト。プラハ経由だけでなく、直に確認をとっておきたいと考える。

2月20日 ある人物から「日本語への翻訳 NG」の連絡。入稿が翌日に迫るなか、やむなく収録を断念する。

2月21日 安倍論文を除いて『世界は考える』入稿

 

というような次第です。

 

そもそもプロジェクトシンジケートには、言葉の壁を越えて、また富の多寡にしばられることなく、未来を形づくるアイデアを広く共有するという理念があります。

 

プロジェクトシンジケートで発表される論文は、たちまち英・中・仏・露・西・アラビア語など各国語に翻訳され、広く読まれるかたちを整えます。また、貧富の差が知識へのアクセスをさまたげるものであってはならないという考えのもと、先進国の有力紙のみならず、後進国の報道機関には無償もしくは安価に論文を配信します。

 

カール・ポパーの「開かれた社会」の理念に照らせば、ジョージ・ソロス氏がこのプロジェクトに出資するのもよくわかる気がします。

プロジェクトシンジケートで発表し、各国語に翻訳され、広く世界で読まれているにもかかわらず、日本語だけ例外で出版しないのは理屈に合いません。出版を予告しながら、直前で断念した自分を自戒しています。

 

とはいうものの、もっと単純に考えるなら、出版社は著者がなくては成り立ちません。

渋る著者を熱心に口説くことはありますが、最後は著者が快く出版をゆるしてくれることが必要です。

 

今回は、著者が望まない文章を出さないという単純な規範にしたがうことにしました。その間、山のように思惑や算段をもちました。コミュニケーションが足りなかったのも確かです。そんなことも含めて、やはり「諸般の事情」ということになるでしょうか。

 

楽しみにしてくださった方には、残念な思いをさせてしまいますが、どうかご海容いただければ幸いです。

幻の『世界は考える』。さしあたりこの見本を手に書店まわりを開始します。
幻の『世界は考える』。さしあたりこの見本を手に書店まわりを開始します。

2013年

2月

10日

大杉栄『日本脱出記』のかっこよさについて

おはようございます。

 

さて、ひさしぶりに大杉栄の話題です。

 

ルポライターの鎌田慧さんが今朝の新潟日報(2月10日付)で、大杉栄『日本脱出記』のかっこよさについて書いています。

 

新潟のSさんが、朝一番のファクシミリで知らせてくれました。

「大杉栄の会」のSさんといえば、顔の広い方なので、ピンとくる向きもあるかもしれません。

 

 

新潟では案外、大杉栄と新潟のゆかりについては知られていません。

 

越後の人としては、「まず上杉謙信と良寛さん」であり、「かろうじて河井継之助や連合艦隊の山本五十六長官、坂口安吾まで」(新潟の書店)ということになるそうです。

 

余談ですが、国家社会主義の北一輝も佐渡に生まれているなど、新潟についてはいろいろと調べはじめればおもしろいのでしょうが、大杉のことにもどります。

 

 

大杉栄は、帝国陸軍勤務の父・大杉東にしたがい、4つのときから17歳の上京まで、幼年時代の多くを新潟の兵隊町、新発田(しばた)ですごしました。

 

その間、名古屋の陸軍幼年学校に進み、窮屈な寄宿生活をかこっていた14歳のとき大杉は、つぎのように新発田をなつかしみます。

 

「僕ははじめて新発田の自由な空を思った。まだほんの子供の時、学校の先生からも遁れ、父や母の目からも遁れて、終日練兵場で遊び暮らしたことを思った。」(自叙伝)

       

大杉のいわゆる「自由な空」は、いまは広場となった旧練兵場で感じることができます。

この空の下、赤穂浪士の堀部安兵衛、帝国ホテルの大倉喜八郎、われらが大杉栄、ラバウルの将軍・今村均、よど号グループの田宮高麿といった個性が育っていきました。

 

 

さて、今年9月16日には、大杉栄が東京・大手町の憲兵隊本部で殺されてから、90年の節目をむかえます。

憲兵隊跡地はパレスホテルに変わりました。

パレスホテルと皇居とをへだてるお堀に白鳥が2羽ならんでいるのをみれば、大杉栄と伊藤野枝に見立ててみたくなるかもしれません。

9月には、大杉ゆかりの新発田、そして大杉の墓をひっそり守ってきた静岡など、各地で記念イベントが企画されているもよう。

 

詳細がわかりしだい、続報したいとおもいます。

2月10日付「新潟日報」鎌田慧さん、大杉栄の自由闊達なかっこよさについて
2月10日付「新潟日報」鎌田慧さん、大杉栄の自由闊達なかっこよさについて

2013年

1月

16日

世界のニュースサイト・ベスト5

おはようございます。

 

 

さて、12月16日に、リアル・クリア・ワールド(RealClearWorld)による毎年恒例の「世界のニュースサイト・ベスト5」が発表されました。

2012年のベスト・ニュースサイトの栄冠に輝いたのは、米フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)でした。

伝統ある英エコノミスト(The Economist)、さらに独シュピーゲル(Der Spiegel)および米ニューリパブリック(The New Republic)を抑えて、堂々の2位に選ばれたのが、

 

チェコに本拠をおく国際言論団プロジェクト・シンジケート(Project Syndicate)です。

150カ国・480余りの報道機関をつなぐ国際言論団プロジェクト・シンジケートの意義について、ノーベル経済学受賞者の J・スティグリッツ教授は、こう述べています。

 

「いかなる時代にもましてグローバルな政治・経済の動きを踏まえることが求められるこんにち、プロジェクト・シンジケートの活動はいっそう際立つ」(ジョセフ・E・スティグリッツ)


 「世界のベストニュースサイト 2012」
 1位 フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)
 2位 プロジェクト・シンジケート(Project Syndicate)
 3位 エコノミスト(The Economist)
 4位 シュピーゲル(Der Spiegel)
 5位 ニュー・リパブリック(The New Republic)

※リアル・クリア・ワールド発表

 

プロジェクト・シンジケートが1月4日に発表した論文集は、安倍晋三首相による英字論文「セキュリティダイヤモンド構想」を含み、すでに一部で話題になりはじめています。

 

日本語版もアツアツのうちにお届けすべく、がんばっています。

2013年

1月

01日

さようなら、2012年

あけましておめでとうございます。

 

すでに戻らない日々について、あきらめることが苦手です。

要は念じ方が足りないだけで、心から望めば、いつでもあの日に帰ることができるのではと。

 

年はあけましたが、2012年をいつでもやりなおせるような気分でいます。

 

 

さて、2012年はどんな一年だったでしょう。

 

新しい年にむけて気分を切り替えるためにも、この場をかりて、旧年を振り返ることをおゆるしください。宇宙飛行士の例を引くまでもなく、心をしずめるために行うデブリーフィングのような自己療法の一種とお考えください。

 

 

2012年1月 三重・桑名に帰省。母校の小学校で、運動場をかけまわる少年たちに「誰のお父さん?」と問われ、20余年の戻らない時の流れを知る。

 

2月 大杉栄『獄中記』の制作合宿、実弟と川の字で寝起きする。事務所が手狭なため、朝の7時から代官山蔦屋書店に入りびたる。昼も同店で食べる。作業がはかどるうえに、「いつもの二人組」と、同店スタッフにも顔が売れる。一挙両得。

 

同月21日 『大杉栄 日本で最も自由だった男』(河出書房新社)発売。「大杉栄のずるい本屋」と題した短い文章を寄稿。早稲田の大学院に論文を提出したばかりのO、芝居の台本も書く国営放送局勤務のKという同級生両君の知恵をかりる。

 

3月 『獄中記』に合わせて、既刊の『自叙伝』もカバーを新装。時間や友情だけでなく、デザインも、いつでもやりなおせる。そんな自分のわがままにつきあってくれる周囲の人たちに感謝。

 

4月17日 大杉栄をめぐる中森明夫 × 坂口恭平トーク in DOMMUNE。坂口恭平さんと初対面ながら、かぜで声が出せず、話もままならない。にもかかわらず、坂口さんが風を通してくれる。パリからお迎えの車がやってきたフランスの片田舎に住む「なまいきシャルロット」の気分。わかるでしょうか、このたとえ。

 

同月30日 大杉豊さんが語る「大杉栄の精神と行動」全40枚スライドトーク@千駄木・旧安田楠雄邸。30人ほどの大杉ファンが参集。大杉たちの同志茶話会を見習ってカレーでも振る舞いたいが、歴史的建物保護のため、お茶も出せない。せめて一人ひとりに声をかけて場を温める。

 

5月13日 これは出獄歓迎会ではない@代官山「M」。Pヴァイン創業者の日暮泰文さんが一夜限りのDJを、坂口恭平さんが大杉栄をめぐる新曲「魔子よ魔子よ」を歌う。クラブの喧噪のなかテンションの高い坂口さんから、新譜制作の構想を聞く。後日詳細を相談にいくが、そのときも再度のかぜで声を失い、ほとんど話にならない。が、風に乗って物事は進む。

 

6月19日 神山町のラトビア共和国大使館で『リガ案内』出版記念レセプション。会場のボールルームのくつろいだ雰囲気とは好対照に、街は台風直撃の暴風雨。タクシーを呼んで、来場者に帰宅をうながす。特命全権大使ヴァイヴァルス閣下は「来なさい」というように手近な数名を公用車に乗せて、暴風雨の街へ。大使の分け隔てのなさに感じ入ると同時に、欧米エリートの体力に舌をまく。

 

同月22日 坂口恭平ニューアルバム「Practice for a Revolution」の吹き込み。前夜も仲間たちと一夜を飲み、語りあかし、普通ならコンディションが危ぶまれるところだが、半身半馬の坂口さんは上半身もあらわに一息に11曲を歌い切る。録音の確認も含めて、きっかり2時間のレコーディング。終えてすぐ、首相官邸に対する反原発デモにくりだす。

 

7月 フランスから建築学生チャーリーくんが来日、土曜社に寄宿するのもこれで4度目。本名シャルリ・エドワルド・イヴ・ルイ・ファニエレと王侯の名前がつらなる。昨年の滞在時にモデルハントをことわってしまった雑誌 POPEYE のリニューアル号を彼にみせる。チャーリーによく似た男性モデルが表紙をかざっているので、彼のすがたを想像してみてください。

 

8月4日 坂口恭平ソロリサイタル@渋谷さくらホール。500人を超える同好の士とうちわを振って騒ぐ。恵比寿リキッドルームに場所を移したアフターパーティで総理みずからDJ。汗だくになりながら、「そう、これでいいんだ」と、えもいわれぬ満足感を味わう。

 

同月19日 新政府ラジオ「国際特番・坂口恭平ニューアルバムを語る」生放送。冒頭うまく映像が届かず、リングサイドから孤独なボクサーを見守るしかないような焦燥をおぼえる。後半、映像も回復し、坂口一家が勢ぞろいして大団円にむかう。最後の最後で、Mac Book Air を片手であやつりくりだされるマジカルな映像は必見です。

 

同月25日 『混乱の本質』発売。坂口恭平の「新政府」とジョージ・ソロスの「世界政府」を相次いで出版する振幅の広さが、自分のなかでは破綻なくちゃんと納まっている。

 

9月8日 ラトビア夜市@表参道 athalie。同店オーナーの平山寛子さんが「ただでもいいのよ」と出す私物の洋服・アクセサリーが祝祭感をもりあげる。ほとんど着られていないであろう欧州モードが全部千円。小学生の息子さんが忙しく店番をしつつ、自作の絵を200円で売る。

 

同月 チャーリーは帰国し、坂口さんは欧州から帰らず、自分は所在なく、いつのまにか受け身の姿勢に入る。日吉の大学図書館に通う毎日。18歳で上京してきたころの日々をやりなおす。下旬、逗子の海水浴に出かけ、葉山の賃貸を見つける。思えばここがターニングポイント。

 

10月 葉山に保養所開設。すぐオープンハウスしてお披露目すべきところが、もったいぶっているうちに秋も深まり、実施せず。春の海辺でパーベキューを企画しますからご期待ください。

 

11月 葉山でぬくぬくと読書三昧。ブログも更新せず、当ウェブサイトの来客数がじりじり下がっていくのを、他人事のように眺める。目先のことはあとに回して、遠いところから再開しようと決め、英国の書籍販売会社と契約をむすぶ。春から英文出版をスタートします。

 

12月 プラハのプロジェクトシンジケート本部から第二弾、第三弾の契約書が届く。振り返れば、この契約書を待ちわびるうちに、受け身になっていたのかもしれない。時期を同じくして、大手町の新聞社の記事審査の仕事が入る。

 

 

というような一年で、反省も何もなく、これ以外にありえなかったような気もしてきました。

 

本を手にとってくださった方、ウェブサイトを訪れてくださる方、気にかけていただいている方、イベントでお目にかかった方、あいさつすらできなかった方も含めて、同じ時代に生きる諸先輩がたと仲間たちへ、感謝の念力を送ります。

 

今年もよろしくお願いします。

土曜社 doyosha [at] gmail.com