Original blog|土曜社オリジナルブログ|2011年

2011年

12月

31日

さようなら、2011年

こんばんは。

 

さて、三重は四日市の伊坂貯水池から、大晦日の夕暮れをお届けします。

 

ことし温かく見守ってくださったみなさまには、感謝するばかりです。

ありがとうございます。

 

土曜社は、新年も退屈することなく、ゆっくり前進していきたいとおもいます。

引き続き、ご愛顧いただければ幸いです。

2011年

12月

12日

『日本脱出記』が「キノミナの本棚」に登場

おはようございます。

新しい週がはじまりました。

 

さて、紀伊國屋書店新宿南店の「キノミナの本棚」で、『日本脱出記』が紹介されています。

 

「大杉栄の思想の根本を知るキッカケになる事に加え、思想は関係無く、閉塞感を打ち破るエネルギーを与えてくれる事を期待して読みたい」(キノミナの本棚

 

本稿の筆者も、ここ数ヶ月の閉塞感を打ち破って前に進みたいと思います。

2011年

12月

09日

札幌弘栄堂書店のウインドウ

札幌の弘栄堂書店パセオ西店から写真が届いて、小躍りしています。

いま訪れたい書店ナンバーワン、札幌弘栄堂書店パセオ西店。
いま訪れたい書店ナンバーワン、札幌弘栄堂書店パセオ西店。

2011年

12月

01日

大杉栄の「子ども社会主義」!?

こんにちは、土曜社です。

 

さて、大杉栄の『自叙傳』が『図書新聞』トップで書評されています。

 

◉栗原康氏(『図書新聞』2011123日)

「いつだって子どもであること。本書は、大杉栄がその人生をつうじて、社会主義のなかになにをみいだしていたのかをはっきりと伝えてくれる。」

 

書評のさわりは、『図書新聞』公式サイトで立ち読みすることができます。

全文を読みたい方は、ぜひ書店で手にとってみてください。

 

『図書新聞』12月3日号。「子ども社会主義」という大きな見出しが目を引きます。
『図書新聞』12月3日号。「子ども社会主義」という大きな見出しが目を引きます。

2011年

11月

28日

読売新聞「本よみうり堂」に『自叙傳』書評が出ました

おはようございます。

 

ここ数日、大杉栄をめぐる3つのニュースがありました。

順を追って、報告していきたいと思います。

 

さて、まず1つめです。

読売新聞「本よみうり堂」に『自叙傳』の書評が出ました。

 

山本亮氏(読売新聞「本よみうり堂」2011119日)

「単純に読み物として興味深いし、現在では失われそうになっている、『実のある楽天家』振りをみせる大杉の生き方は魅力がある。」

 

ぜひチェックしてみてください。

2011年

11月

18日

漫画「大杉栄の自叙伝」、三軒茶屋で無料配布

こんにちは、

きょうも大杉栄『自叙傳』の話題です。

 

 

キャロットタワーのTSUTAYA三軒茶屋店では、期間限定で『自叙傳』の漫画を配布しています。

 

6ページの、小さな漫画を描いてくれたのは、原口輪佳さん。

女性の漫画家です。

 

印刷から折りまで、すべて手作りのため製作部数に限りがあります。

ぜひ手に入れてみてください。

 

 

◉TSUTAYA 三軒茶屋店 ノンフィクション売場

この10月に、原口輪佳処女作品集『WACAMANGA1』も出たもよう。要注目です。
この10月に、原口輪佳処女作品集『WACAMANGA1』も出たもよう。要注目です。

2011年

11月

17日

眼の男、大杉栄 声の男、大杉栄

おはようございます。

 

 

さて、本の朗読者を探しています。

 

  • 内 容:大杉栄の著作を朗読・録音し、オーディオブックとして発売します。
  • 対 象:38歳までの男性(大杉栄が生きた年齢です)。

 

詳細は、「スカウト|人材募集」ページにございます。

 

 

大杉栄の声ということで、女性の方は今回応募いただけません。

いい声の男性にぜひ、「応募してみなさいよ」と水を向けていただければ幸いです(男は自薦が苦手だったりしますから)。

 

 

「眼の男」といわれた大杉栄には、残念ながら、肉声の記録が残っていません。

 

パリのサン・ドニ街でおこなった激しい演説も、日比谷公園で検束されながら「おれは大杉だ!」と叫んだ声も想像するほかないわけです。

 

大杉栄の生まれが1885年で、その8年前、1877年にトーマス・エジソンによって円柱形アナログレコードが発明されていますから、録音の機会のなかったことが本当におしまれます。

 

1970年の映画「エロス+虐殺」(吉田喜重監督)では、29歳の細川俊之が大杉栄を演じました。

 

今回の募集は、大杉栄に声をあたえる、細川俊之以来のこころみになります。

声に覚えのある男性諸兄の応募をお待ちしています。

 

 

2011年

11月

14日

さようなら、ルミネ新宿2店

寂しいお知らせがあります。

 

ルミネ新宿2のブックファーストが閉店するそうです。

店頭の張り紙をみて、暗然としました。

 

 

ルミネ新宿2店は、隣のルミネ新宿1店と競うようにして、よく本を売ってくれる店でした。

 

忘れられないのが、井野朋也著『新宿駅最後の小さなお店ベルク』(ブルース・インターアクションズ、2008年)のこと。前職で販売を担当した一冊です。

 

新宿駅東口改札すぐのビア&カフェ「ベルク」は当時、大家にあたるJR駅ビルから立ち退き勧告をうけていました。

 

同店は、そのベルクと同じくJR駅ビルの店子という難しい立場にありながら、そっと売りのばしてくれたものです。

 

 

11月末まで通常どおり営業し、あとはルミネ新宿1店がその顧客を引き継ぐそうです。

ルミネ新宿2店に思い出のある方は、閉店してしまう前に、ぜひ訪れてみてください。

 

◉ブックファースト ルミネ新宿2店 新刊台

『自叙傳』展開の図。『日本脱出記』もまっ先に注目していただきました。
『自叙傳』展開の図。『日本脱出記』もまっ先に注目していただきました。

2011年

11月

09日

パリの新聞『オヴニー』に『日本脱出記』が出ました

おはようございます。

 

 

さて、パリの新聞『Ovni オヴニー』に『日本脱出記』書評が出ました。

 

1976年かな、パリに住み始めたボクは、たまたま読んだ大杉栄の『日本脱出記』にとっつかまってしまった。そこには、無政府主義による革命を固く信じながらも、奔放で、自由な精神を第一とし、人生、女、子供をこよなく愛した男の息吹きがある。(『Ovni オヴニー』2011年11月1日)

 

 

『オヴニー』は、パリで発行されている日本語新聞です。

 

東京でも配布されていまして、市ヶ谷の日仏学院、恵比寿の日仏会館、ほかに赤坂や六本木のオーバカナル各店で見かけたことがあります。

 

今回の書評は、同紙公式ウェブサイトで、その全文を読むことができます。

ぜひチェックしてみてください。

 

 

パリの本屋に『日本脱出記』を置いてもらいたいな——。

 

シェイクスピア&カンパニー、ラ・ユンヌ、フナック、それにジュンク堂書店のパリ支店……。

 

そんなわけで、売り込みをはじめました。  

うまくいったら、ご報告します。

『オヴニー』の始まりは、1974年の『いりふね・でふね』にさかのぼるそうです。創刊のいきさつについては、堀内誠一著『父の時代・私の時代』(日本エディタースクール出版部、1979年)に詳しかったような気がします(あるいは『パリからの旅』だったかもしれません——いずれも本が手元になく、あやふやです)。
『オヴニー』の始まりは、1974年の『いりふね・でふね』にさかのぼるそうです。創刊のいきさつについては、堀内誠一著『父の時代・私の時代』(日本エディタースクール出版部、1979年)に詳しかったような気がします(あるいは『パリからの旅』だったかもしれません——いずれも本が手元になく、あやふやです)。

2011年

11月

07日

『日本脱出記』、『トスキナア』で紹介

おはようございます。

新しい一週間がはじまりました。

 

 

さて、大杉栄の『日本脱出記』の話題です。

 

雑誌『トスキナア』第14号に『日本脱出記』紹介の記事が出ました。

 

今回、土曜社からペーパーバック版として出版された『日本脱出記』は斬新な装幀で、「検束される大杉」の写真をカバーにつかい、カバー裏にアルス社による広告文や新聞の批評を載せ、さらにカバーの袖に大杉豊著『日録・大杉栄伝』から本書関連項目を抜粋して紹介するなど、当時の雰囲気を伝えている。(『トスキナア』第14号)

 

『トスキナア』という雑誌について、はじめて知った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

なんの雑誌かといいますと——、

 

試しにタイトルを逆さに読んでみてください。

本誌収載の、大杉豊「『日録・大杉栄伝』補訂」によると、東京外国語大学のプロメテウスホールには、同学の発展に尽力のあった22名として、二葉亭四迷、中江兆民、加藤高明、 内村鑑三、 新渡戸稲造、岡倉天心、黒田清輝、永井荷風、米川正夫、石川淳、中原中也らとならんで大杉栄も顕彰され、名入りのプレートが掲げられているそうです。
本誌収載の、大杉豊「『日録・大杉栄伝』補訂」によると、東京外国語大学のプロメテウスホールには、同学の発展に尽力のあった22名として、二葉亭四迷、中江兆民、加藤高明、 内村鑑三、 新渡戸稲造、岡倉天心、黒田清輝、永井荷風、米川正夫、石川淳、中原中也らとならんで大杉栄も顕彰され、名入りのプレートが掲げられているそうです。

2011年

11月

01日

『自叙傳』、大杉栄の故郷のタウン誌で紹介

おはようございます。

 

きょうから11月です。

古い立ち木を切って、心を新たに進んでいきたいと思います。

 

 

さて、大杉栄が少年時代をすごした町、新発田のタウン誌『街角こんぱす』で『自叙傳』が紹介されました。

 

新発田の町は、徳川のころ六万石の城下町だったそうですが、明治維新で帝国陸軍の歩兵第16連隊が町にはいり、戦後も陸上自衛隊が駐屯するなど、大杉栄のいわゆる「兵隊町」です。

 

赤穂浪士の堀部安兵衛、帝国ホテルの大倉喜八郎、アナーキストの大杉栄、ラバウルの将軍・今村均、よど号ハイジャック事件の田宮高麿……。

 

こうして新発田ゆかりの人物をながめると、そう大きくもないこの町には、根底になにか流れている——そう深読みもしたくなります。

 

 

新発田・胎内にお住まいであれば、『街角こんぱす』11月号をご覧いただけるとうれしいです。

『街角こんぱす』11月号。フォトグラファー・吉原悠博氏の連載も、アートファン必読です。
『街角こんぱす』11月号。フォトグラファー・吉原悠博氏の連載も、アートファン必読です。

2011年

10月

27日

[本]のメルマガ、土曜社をインタビュー!

こんばんは。

 

さて、一つ手前味噌のお知らせです。

 

[本]のメルマガの臨時企画で、当ブログの筆者がインタビューを受けました。

 

しょうがないなあ、と笑いながらご覧いただければ幸いです。

2011年

10月

24日

出版専門紙「新文化」に『自叙傳』のニュースが出ました

さて、大杉栄『自叙傳』の続報です。

 

出版専門紙『新文化』の定番コーナー「ウチのイチ押し」で、『自叙傳』が紹介されました。

 

理論家肌というよりは直情径行型で、ロマンチスト、ストーリーテラーの彼は、生きていればあるいは小説家としても名を成したかもしれない。(『新文化』2011年10月20日)

 

 

ほんとうにそうだったかもしれない、と想像してみることがあります。

 

事実、大杉栄は17歳のころ、ぼんやりと文学をやろうと考えていました。

ところが、陸軍軍人の父親に反対され、つぎのように諭されます。

 

「とにかく東京へ出して勉強はさせてやるつもりだが、文学というのだけはもう一度考えなおしてみてくれ。おまえも七、八人の兄弟の惣領なんだからな、医科とか工科とかの将来の確実なものなら、大学へでもやってやるがね。どうも文学じゃ困るな。」(大杉栄著『自叙傳』より)

 

結局、フランス語をやるという建て前で上京をゆるされた大杉少年は、「なにもかも忘れて夜昼ただ夢中になって」勉強し、東京外国語学校(現・東京外国語大学)に見事合格します。

 

 

大杉栄の『自叙傳』は、「坂の上の雲」の時代を駆け抜けた一少年の青春勉強記として読んでもおもしろいんです。

 

読書の内容を友だちに話して聞かせる「アウトプット勉強術」や

好きな女の子にそっと猛勉強を誓う「片思い勉強術」、

ライバルと寝食をともにして切磋琢磨する「ルームシェア勉強法」——、

 

そんな正攻法ばかりでなく、

 

「伯父さんの威光を借りる法」や「替玉受験術」のような掟破りの裏技も出てきます。

 

 

将来の夢と目前の勉強とのギャップに悩む十代の読者に、もっと読まれてほしいと願うしだいです。

出版専門紙『新文化』は毎週金曜日に配達されます。新規書店の開業情報や主要書店における本の売上ランキングなど、業界のニュースは、この『新文化』が頼りです。
出版専門紙『新文化』は毎週金曜日に配達されます。新規書店の開業情報や主要書店における本の売上ランキングなど、業界のニュースは、この『新文化』が頼りです。

2011年

10月

21日

「ウラゲツ☆ブログ」に『自叙傳』が登場

さて、いきなり宣伝です。

 

ウラゲツ☆ブログ」に『自叙傳』が登場しました。

 

それにしても大杉栄はよく「刺され」ます。16歳の折には同期生に刺され、31歳の折にはとある女性に寝しなを刺されています。どちらも浅からぬ傷ですが、それを告白する大杉の筆はじつにあっけらかんとしたもの。(ウラゲツ☆ブログより)

 

全文はぜひ、「ウラゲツ☆ブログ」でご覧ください。

 

 

31歳の大杉栄が刺されたのは、葉山の旅館でのことでした。

世に言う日蔭茶屋事件です。

 

大杉栄を刺した神近市子は、東京日日新聞の女性記者として活躍するなど、「新しい女」として耳目をあつめる存在でした。

彼女は、刑期を終えると、のちに社会党から代議士に選出されています。 

 

事件の舞台となった葉山の日蔭の茶屋は、いまも創業の地で日本料理店を営んでいます。

300年に余る老舗ですね。

屋号だけは、日影茶屋と一字変えたようです。

 

 

夏の終わりにこの日影茶屋をおとずれた際、かくかくしかじかと女将さんに来意をつげると、奥のほうから当時の写真を持ってきてくれました。

 

事件から95年が経ち、日影茶屋にも当時を知る人がいないのが残念です。

『日影茶屋物語 しづ女覚書』(かまくら春秋社、1992年)という本では、72年の長きにわたり茶屋に勤めた三角しづさんの聞き語りを読むことができます。

 

 

この秋、『自叙傳』を読み終えてしまった方には、葉山の日影茶屋をおとずれてみることをおすすめします。

海辺のラ・マーレ・ド・チャヤ(日影茶屋の支店です)から、葉山の海をぼんやりながめるにも、もってこいの季節です。

日影茶屋(旧日蔭茶屋)。山にせまった2階のいちばん奥の二十番が大杉栄の定宿でした。
日影茶屋(旧日蔭茶屋)。山にせまった2階のいちばん奥の二十番が大杉栄の定宿でした。
『日影茶屋物語』と『自叙傳』。併読すればおもしろさも倍増します。
『日影茶屋物語』と『自叙傳』。併読すればおもしろさも倍増します。

2011年

10月

20日

札幌弘栄堂書店パセオ西店Sさんのこと

おはようございます。

 

 

さて、ちょっとまわりくどい話です。

 

本をめぐる出版業界では、ウェブ時代にもめげることなく、受発注の連絡に今も Fax が多用されています。

 

コストの問題はさておき、これにはよい面もありまして、届いた Fax の余白に「よろしく!」と手書きで書かれてあったりすると、それだけで、心がなごみます。

 

丁寧な字じゃなくても、なぐり書きでいいんです。

 

もっというと、注文書のキーワードの箇所にすーっとアンダーラインされているだけで、受け入れてもらったみたいで、もう、それはそれはうれしい。

 

今でいうところの、Facebook の「いいね!」みたいな感覚でしょうか。

みんな忙しい毎日ですから、手軽さがいちばんです。

 

なかには、ドラえもんのスタンプを毎回ポンと捺してくれる書店もありまして、そんな書店が、ふいと Fax をくれなくなると、なにかあったんじゃなかろうか、と急に心配になったり——人間の営みですね。

 

 

さて、まわりくどくなりましたが、本題です。

 

札幌の弘栄堂書店パセオ西店から、2枚の写真が届きました。

大杉栄の『日本脱出記』と『自叙傳』を工夫して、売りのばしてくれている図です。

 

北海道と東京という距離もあって、実はまだ同店を訪れたことがありません。

担当のSさんにも、お会いしたことがない。

 

なのに、パセオ西店のことは、なぜかいつも親しく感じます。

理由は、Fax の使い方にあるのかもしれません。

 

同店から届く Fax には、いつも「S」とサインがあって、そのテン書体にも似た筆跡を目にすると、ああ、札幌はもう紅葉がはじまったかな——なんて、想いは北海道に飛んでいきます。

 

また、凪のように注文の Fax が止まって、くさくさしているようなとき、突如ウィーンと Fax が届いて、見ると、やはりそのテン書体で「1冊売れました!」と小さく書かれてあったりする。

 

そんなわけで、

 

札幌の弘栄堂書店パセオ西店さんのことをいつも親しく感じているしだいです。

◉札幌弘栄堂書店 パセオ西店

本の陳列もさることながら、書棚の木枠部分にまでPOPと同じ意匠がほどこされるという、こまやかな展開。
本の陳列もさることながら、書棚の木枠部分にまでPOPと同じ意匠がほどこされるという、こまやかな展開。
なんの本だろう、と手にとりたくなります。
なんの本だろう、と手にとりたくなります。

2011年

10月

16日

藤原ヒロシさん、『自叙傳』お買い上げ

さて、前回に引き続き、藤原ヒロシさんの話題です。

 

藤原ヒロシさんの公式ブログ「HF - blog」に、土曜社版『自叙傳』が登場しました。

新宿の模索舎でお買い上げいただいたそうで、うれしいかぎりです。

 

 

ここで、ごく個人的な思い出を記すことをおゆるしください。

長くなりそうですので、全部すっとばしていただいてもかまいません。

 

 

藤原ヒロシさんをはじめて見たのは、2000年の夏、新宿リキッドルームでのことでした。リキッドルームが、「jazz / alternative」という看板をかかげて恵比寿に移転する少し前の話です。

 

その晩は、瀧見憲司氏主宰のクルーエル・レコーズの何周年かを記念するコンサートでした。

 

出演は、同レーベル所属のミュージシャンたちで、特にポート・オブ・ノーツという男女のデュオが、故アイルトン・セナに捧げる演奏で会場を大いにわかせました。

 

ぼくは学部の4年生で、同級生がコンサルや銀行に内定をきめて、卒業旅行とやらで北米へ南欧へと学生最後の夏を満喫しているのをよそに、就職活動も中途半端で、街にへばりついて、できたばかりの渋谷ツタヤで新たに週4日のアルバイトをはじめたりして、「男はなにをしても一生食えるんだから」とうそぶきながらも、内心には不安をかかえていました。

 

余談のうえに余談で恐縮ですが、当時新宿のリキッドルームといえば、入場客がエレベータを使うことは、ゆるされていませんでした。1基しかないリフトは、出演者用だったのでしょう。

 

7階のフロアまでぞろぞろと歌舞伎町の雑居ビルの狭い階段をのぼらされ、もともと乗り気じゃなかったせいもあって、ぼくはライブがはじまってからも、仲間からはなれて、ひとり後方でぶつくさ腐っていました。

 

そんなときです。周囲が不意にざわめいて、いかにも今夜のライブを満喫しようとフレッシュに意気込んだ若い連中が、こんなことを口々にささやきあっているのです。

 

「うわ、やべえよ。」

「おれたちの神のおでましだ——。」

 

どうやら、藤原ヒロシさんが会場にきているらしいと分かりました。

 

 

ちょっと強引な展開になりますが、この瞬間、ぼくはジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』の印象的なシーンに入り込んでいきました。

 

白状すると、そのときはまだ『オン・ザ・ロード』を読んでいなかったのです。

 

いえ、もっと正確にいうと、その数年前に河出文庫の『路上』(福田稔訳)を入手して、何度か読みはじめるものの、そのたびに途中であきてしまって、数ヶ月後にまた最初から読みなおすことをくりかえす——そんなことで、終盤のこのシーンに、まだたどりついていなかったわけです。

 

いま手元に当時の文庫がないので、代わりにペンギン版から引用してみます。

 

Suddenly Dean stared into the darkness of a corner beyond the bandstand and said, 'Sal, God has arrived.' /I looked. George Shearing.(ディーンは、バンドスタンドの向こうの暗がりをみつめ、ふいと言いはなった——サル、神様のおでましだ。/ぼくは見た。ジョージ・シアリングだ。)

※ジャック・ケルアック著『オン・ザ・ロード』より。訳は私訳。

 

 

後日この箇所を読んで、やっと合点がいきました。

そうか、あの若い青年は、ディーン・モリアーティを気取ってあんな大げさな言い方をしたものだと。

当時のぼくも、22歳のれっきとした青年だったわけですが。

 

 

さて、その晩のリキッドルームでは、「おれたちの神様」こと藤原ヒロシさんがアコースティック・ギターを奏で、元ラブ・タンバリンズのエリちゃんが歌い、ぼくは不安と不機嫌とをひきずりながらも印象的だったその晩のことを、10年を経た今もこうして懐かしく思い出すのです。

2011年

10月

12日

藤原ヒロシさんのスタバで大杉栄を読む

さて、コーヒーと読書の話です。

 

藤原ヒロシさんプロデュースの、スターバックス表参道 B-SIDE 店では、コーヒーのお供に、備え付けの本を手にとって読むことができます。

 

大杉栄の『自叙傳』と『日本脱出記』も、ちゃんと並んでいます。

 

秋のショッピングついでに、立ち寄ってみていただけるとうれしいです。

 

 

スターバックス発祥の地・米国では、街角のスターバックスで本が買えると聞いたことがあります。

シエラレオネの元少年兵の回想記のような硬派な本が、同社のサポートをえて、ベストセラーに輝くということもあるそうです。

表参道で働く友だちが知らせてくれました。
表参道で働く友だちが知らせてくれました。

2011年

10月

11日

渋谷の大杉栄『自叙傳』

こんにちは。

 

最近、このブログのそっけなさに多少気がさしております。

業務的にすぎるかな……とも。

 

が、毎日いろいろと忙しい生活のなかで、せめてこのブログぐらいは、山もなく谷もなく、平坦に歩んでいきたいと思うしだいです。

 

急展開もサプライズもなにありませんが、のんびり見守っていただければ幸いです。

 

 

さて、大杉栄『自叙傳』の取り扱い店がさらに増えてきました。

現在、217店です。

 

そのなかから、渋谷の書店をリポートします。

 

こうして店頭に本がならんでいる間に、書評が出てほしい。

切実なところです。

 

2、3の書評がきまりかけています。

追々報告させてください。

◉文教堂書店 渋谷店 新刊売場

9/11に改装したばかりのお店。10/14には、同店2Fにゲオが開店するそうです。
9/11に改装したばかりのお店。10/14には、同店2Fにゲオが開店するそうです。

◉大盛堂書店 渋谷駅前店 2Fノンフィクション

ノンフィクションが充実。学生だったころ、アルバイトの面接をしくじった思い出の書店だったりします。
ノンフィクションが充実。学生だったころ、アルバイトの面接をしくじった思い出の書店だったりします。

◉Book Cumu NHK店

放文社のあったNHK放送センター1Fに、Book Cumu が出店。同チェーンは、ほかに朝日新聞、読売新聞にも店をかまえる。つぎは毎日新聞にも来てくれないかなー、という声も。
放文社のあったNHK放送センター1Fに、Book Cumu が出店。同チェーンは、ほかに朝日新聞、読売新聞にも店をかまえる。つぎは毎日新聞にも来てくれないかなー、という声も。

◉リブロ 渋谷店

大杉栄 in PARCO。
大杉栄 in PARCO。

2011年

10月

03日

『自叙傳』書店展開図(神保町編)

おはようございます。

 

さて、本の街・神保町でも『自叙傳』が発売されています。

 

さすが本の目利きが集まる街だけあって、『自叙傳』の初動も、ほかの街に比べて、いくぶん早いようです。

 

 

◉三省堂書店 神保町本店 人文書売場(4F)

小川原正道著『福沢諭吉「官」との闘い』の隣り。福沢は晩年、理想の政治体制について問われて、「それは無政府だ、政府や法律のあるのは悪いことだ」と答えたということです。
小川原正道著『福沢諭吉「官」との闘い』の隣り。福沢は晩年、理想の政治体制について問われて、「それは無政府だ、政府や法律のあるのは悪いことだ」と答えたということです。

◉東京堂書店 神田神保町店 新刊台(1F)

「初動もいいので、補充します」と、フロア長の言葉に励まされてしまいました。
「初動もいいので、補充します」と、フロア長の言葉に励まされてしまいました。

◉書泉 グランデ 人文書売場(3F)

アナーキズムのみならず、社会主義・労働運動の書籍が充実している。奥の棚に『日本脱出記』も見えるでしょうか。
アナーキズムのみならず、社会主義・労働運動の書籍が充実している。奥の棚に『日本脱出記』も見えるでしょうか。


 

追伸、

 

この10月3日で、土曜社は創業1年を迎えました。

 

謝恩のパーティもなにもありませんが、応援してくださるみなさまには、そっと感謝の念をお送りするばかりです。

 

ありがとうございます——。

 

過去を振り返るとき、つい、できなかったことや至らなかった点ばかりを悔やんでしまいがちです。

が、この1年は、願ってもなかった幸運や思いのほかうまくいった出来事の連続でした。

 

全部忘れたくない。

 

記録魔の自分には、365日分の日報と得意先のアドレス、そして膨大なメールのやりとりが残されています。

それらを手繰って、最初の1年をじっと振り返ってみたいと思います。

 

2011年

9月

28日

『自叙傳』書店展開図(渋谷・三軒茶屋編)

おはようございます。

 

さて、新刊『自叙傳』の話題です。

 

先週に引き続き、都内の書店を歩いてまわっております。

各地で、まっ白い『自叙傳』を見つけては、

 

「どうか読者の気に入りますように——」

 

祈るような気持ちです。

 

「アマゾンの在庫が、3冊から減らないねえ。」

 

心配して電話をくれる人もあり、気が抜けません。

 

◉TSUTAYA 三軒茶屋店 ノンフィクション新刊

『青春ピカソ』『私のマルクス』『ジャン・ルノワール自伝』など、古今東西の青春期が勢ぞろい。
『青春ピカソ』『私のマルクス』『ジャン・ルノワール自伝』など、古今東西の青春期が勢ぞろい。
入口すぐの新刊台でも。わくわくするような展開です。
入口すぐの新刊台でも。わくわくするような展開です。

◉ブックファースト 渋谷文化村通り店 B2F人文売場

本からはみだして薄緑に見えるのは、問屋のJRCの売上スリップ。書店で、このスリップを見かけたら、その書店は人文書に強みがあると思ってほぼ間違いありません。
本からはみだして薄緑に見えるのは、問屋のJRCの売上スリップ。書店で、このスリップを見かけたら、その書店は人文書に強みがあると思ってほぼ間違いありません。

◉MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店 日本思想売場

大杉栄の隣りは、幸徳秋水と中江兆民。『風狂のひと辻潤』も見える。
大杉栄の隣りは、幸徳秋水と中江兆民。『風狂のひと辻潤』も見える。

◉タワーレコード 渋谷店 7F

大江健三郎の『日常生活の冒険』が棚で面陳。『日本脱出記』と併読をおすすめします。
大江健三郎の『日常生活の冒険』が棚で面陳。『日本脱出記』と併読をおすすめします。

◉SHIBUYA TSUTAYA 6Fノンフィクション売場

深夜の待ち合わせついでに、そっと『自叙伝』を手にとってみてほしい。
深夜の待ち合わせついでに、そっと『自叙伝』を手にとってみてほしい。

2011年

9月

26日

新事実発見!あの大杉栄が萬松堂の常連客だった

新潟の萬松堂から、うれしい写真が届きました。

こうして見ると、本って質感がすごいです。
こうして見ると、本って質感がすごいです。

2011年

9月

24日

下北沢・吉祥寺で大杉栄の『自叙傳』発売

おはようございます。

 

昨日は、3連休の土曜日——しかも25日払いの月給も出た直後というわけで、土曜社がある代官山も人出でにぎやかでした。

 

さらに驚いたのが、吉祥寺の活気です。

 

駅ビルのブックファーストのレジはずっと行列し、輸入食品店カーニバルの軒先では、しゃがみこんでデリやらソフトクリームを食べる親子や恋人たちの姿がありました。

 

まるで祝祭日。

こんな土曜日が続くといいなと夢想してしまいます。

 

 

さて、吉祥寺・下北沢でも『自叙傳』が発売されました。

 

新しく出た1923年の名著として、各書店でプッシュされています。

秋の読書計画に組み込んでいただけるとうれしいです。

 

◉博文堂書店 下北沢店 1F

堀江貴文著『0311再起動』と竹中平蔵著『日本経済こうすれば復興する』の挟み撃ち。
堀江貴文著『0311再起動』と竹中平蔵著『日本経済こうすれば復興する』の挟み撃ち。

◉三省堂書店 下北沢店 人文書売場

『刑務所図書館の人びと』と。「ぼくは獄中で出来た人間だ」——大杉栄も獄中でよく読んだ。
『刑務所図書館の人びと』と。「ぼくは獄中で出来た人間だ」——大杉栄も獄中でよく読んだ。

◉ヴィレッジヴァンガード 下北沢店

大杉栄ツインタワー。POPがうれしい。
大杉栄ツインタワー。POPがうれしい。

◉ブックスルーエ B1F

B1F、1F、2Fと、3フロアで独自展開。『自叙傳』も今週店着予定です。
B1F、1F、2Fと、3フロアで独自展開。『自叙傳』も今週店着予定です。

◉啓文堂書店 吉祥寺店 歴史書売場

こう見ると、『日本脱出記』の小振りさが際立ちます。
こう見ると、『日本脱出記』の小振りさが際立ちます。

2011年

9月

24日

「朝日新聞」に『日本脱出記』が!

おはようございます。

土曜日の朝です。

 

 

さて、「朝日新聞」(9月24日朝刊)に、『日本脱出記』が登場しました。

 

別刷りの、「再読 こんな時こんな本」という記事です。

 

書店で確かな一ジャンルを形成する「獄中記」について、朝日新聞の坂本哲史記者が三省堂書店・福澤いづみ氏に聞くというレポートです。

 

「疑惑の総合商社」とささやかれた元代議士とホリエモンの話題から切り出される記事もおもしろいので、ぜひご覧ください。

 

 

小さく出版業をいとなむ弊社は、書店の応援があって、なんとか立ち行きます。

 

大手出版社と違って、新聞広告も営業部隊も、見計らい配本もありません。

(自社ビルや管理部門もない分、ぐっと身軽ですが。)

 

書店がみずから情報を見つけて、注文書を Fax してくれて、はじめて、土曜社の本は読者をめがけて流通に乗るわけです。

 

『日本脱出記』は、4月発売当初の109店から235店へ、取り扱ってくれる書店も増えています。

店の数はそのまま、少なくみても235人の書店員が本書を手にして、売ってくれているということです。

 

でありながら、訪問すらしていない書店やお会いできていない書店員の、なんと多いことか。

 

今回の「朝日新聞」登場を励みに、この秋は、もっと書店のことを知りたいと思います。

 

朗報は、新発田のS氏から届きました。
朗報は、新発田のS氏から届きました。

2011年

9月

23日

新発田訪問記

こんばんは。

 

 

さて、大杉栄『自叙傳』の話題です。

 

さきの3連休に、本書の主要舞台のひとつ、新潟・新発田(しばた)をたずねてきました。

 

大杉豊氏から紹介を受けたS氏の電話番号を手帳に書き留めて、ほかになんの用意もいらない、気ままな1泊旅行です。

 

出かける直前に、明治大学のH先生から「旧練兵場の銀杏の木は訪れるべきですよ」ということだけ教わっていました。

 

その銀杏の木が、下の写真です。

本書にもこの銀杏の木が、印象的な火事のシーンで登場します。

 

 

もうひとつ。

大杉栄ゆかりの場所があります。

 

万松堂書店です。

 

この本屋をめぐって、『自叙傳』におもしろいエピソードがあります。

少し長くなりますが、引用させてください。

 

 

 本読みの僕はいつもみんなの牛耳をとっていた。僕は友人のほとんどだれよりも早くから『少年世界』を読んでいた。そしてある妙な本屋と知り合いになって、そこからいろんな本を買ってきて読んでいた。修身の逸話を集めた翻訳物のようなのも持っていた。まただれも知らない、四、五冊続きの大きな作文の本も持っていた。そうした雑誌や書物からそっと持ってきた僕の演説や作文はみんなの喝采を呼ばずにはおかなかった。

 

 新発田から三、四里西南の水原という町に、中村万松堂という本屋があった。そこの小僧だか番頭だかが、新発田にきて、ある裏長屋のようなところに住んでいた。それをどうして知ったのか、僕がたぶんほとんど最初のお客となって、なにかの本を買いに行った。店もなんにもなくて、ただ座敷の隅に数十冊の本を並べてあっただけだった。しかし、それまで本屋というもののまるでなかった、ただある一軒の雑貨屋が教科書と文房具との店を兼ねていただけの新発田では、それでも十分豊富な本屋だったのだ。僕はひまがあるとその本屋へ遊びに行って、寝ころんでいろんな本を読んで、なにか気に入ったものがあると買ってきた。こづかい銭というものを一文ももらわなかった僕は、文房具でも本でも、要るだけのものは母に黙ってでも、どこかの店から月末払いで持ってくることができた。その払いが少しかさむと、母はこれからはあらかじめそう言うようにと注意はしたが、決してしかることはなかった。

(大杉栄著『自叙傳』より)

 

 

大杉栄は、ほんとうによく読み、よく書いた少年だったんですね。

 

あそこで寝ころんで本を選んだのかな、とおぼしき小上がりも、そっと帳場の奥に見えていました。

 

 

 

旧練兵場の銀杏の木。藩主の庭園だったころから、この地に根をはっているそうです。
旧練兵場の銀杏の木。藩主の庭園だったころから、この地に根をはっているそうです。
新発田の万松堂。新刊だけに偏らない書棚は、東京でいうと阿佐ヶ谷の書原本店が近い雰囲気です。
新発田の万松堂。新刊だけに偏らない書棚は、東京でいうと阿佐ヶ谷の書原本店が近い雰囲気です。

2011年

9月

23日

新宿各地で『自叙傳』が発売されました

おはようございます。

 

大杉栄の『自叙傳』を9/16(金)に問屋に納入して、売れ行きの初動がみえるまで、気もそぞろにすごしております。

 

「装丁は、当初案にしておけばよかったかな……。」

「背表紙も、やりすぎちゃったかな……。」

 

献本や拡販ツールの発送などで、手を動かして、気をまぎらわせるばかりです。

 

 

そんな不安をかき消す手っとり早い方法は、書店を訪問すること。

これです。

 

押し寄せる不安をよそに、何事もなかったかのように本が並ぶ書店を訪れると、ほんとうに救われます。

 

たわいないですよね。

 

でも、となりに並べられた本がとてつもなくかっこよくみえて、また自信が危うくなったりするわけですが。

 

 

気を取りなおします。

 

さて、新宿の各書店で、『自叙傳』が発売されました。

ぜひその24ミリの厚みと、飾り気のないまっ白の装丁を手にしていただければ幸いです。

 

◉紀伊國屋書店 新宿本店 1F

入口すぐの一等地。『日本脱出記』は、ここで50冊以上を売ってくれています。
入口すぐの一等地。『日本脱出記』は、ここで50冊以上を売ってくれています。

◉ジュンク堂書店 新宿店 7F人文書売り場

「大逆事件」から100年。映画の制作がうわさされています。
「大逆事件」から100年。映画の制作がうわさされています。

◉ブックファースト ルミネ新宿2店 人文書売り場

中森明夫著『アナーキー・イン・ザ・JP』のとなりで面陳。佐々木中の著作が充実しています。
中森明夫著『アナーキー・イン・ザ・JP』のとなりで面陳。佐々木中の著作が充実しています。

◉ブックファースト ルミネ新宿1店 人文書売り場

鶴見俊輔・関川夏央『日本人は何を捨ててきたのか』の並び。
鶴見俊輔・関川夏央『日本人は何を捨ててきたのか』の並び。

◉ヴィレッジヴァンガード 新宿マルイカレン

ヴィレッジヴァンガードでは、実験的に、当店と下北沢のみでお取り扱いしています。若い読者に手に取ってほしい。
ヴィレッジヴァンガードでは、実験的に、当店と下北沢のみでお取り扱いしています。若い読者に手に取ってほしい。

2011年

9月

21日

『日本脱出記』が「絶対読んでトクする14冊」に選定

おはようございます。

 

 

さて、『日本脱出記』の話題です。

 

本とコミックの情報マガジン『ダ・ヴィンチ』10月号で、「七人のブックウォッチャー 絶対読んでトクする14冊」の1冊に『日本脱出記』が選ばれました。

 

「好奇心・発見が満載 ★★★★★」

 

と好評です。

 

卯月鮎、千街晶之、華恵、吉田大助、佐藤優、瀧井朝世、源双葉という7人の達人たちがそれぞれ、選りすぐりの2冊を紹介するこの企画。

 

さて、どの達人が紹介してくれているでしょうか——、

発売中の『ダ・ヴィンチ』10月号をぜひチェックしてみてください。

前職ブルース・インターアクションズの先輩がそっと知らせてくれました。
前職ブルース・インターアクションズの先輩がそっと知らせてくれました。

2011年

9月

20日

まっ白な大杉栄の『自叙傳』が、196の書店に登場

こんにちは。

当ブログをチェックいただき、ありがとうございます。

 

この3連休中、うれしいニュースがいくつかありました。

順を追ってお知らせしてまいります。

 

 

さて、この9/16(金)に、第2弾の大杉栄著『自叙傳』を問屋に納品しました。

 

北海道から沖縄まで、地域によってばらつきはありますが、196の書店を『自叙伝』がまっ白に飾ります。

 

思えば、4月の『日本脱出記』のとき、初回配本は精いっぱいの105店でした。

対して、こんどの『自叙傳』では、前回比186%の店数です。

 

お取り扱い書店一覧をご覧いただき、ぜひお近くの書店で手に取ってみていただけるとうれしいです。

 

2011年

9月

11日

大杉栄の『自叙傳』をめぐる突飛なブックリスト

こんばんは、

 

この秋は、大杉栄の『自叙傳』について、ドシドシ宣伝していきます。

年に3冊とスロウな出版計画ですから、どうしても、1冊ごとに余計な体重がかかってしまいます。

 

若干くどくなるかもしれませんが、適度にお付き合いいただければ幸いです。

 

 

さて、

 

今さら『自叙傳』の宣伝について、考えあぐねています。

おもしろいことは間違いないけれど、なぜ今、読んでもらいたいのか——それが問題なんです。

 

 

大杉栄の『自叙傳』は、ほとんど古典といえる作品です。

福沢諭吉の『福翁自伝』、勝小吉『夢酔独言』と合わせて、日本が誇る3大自伝ともいわれます。

 

本書に触発をうけ、あるいは本書を下敷きにして、数々の傑作も生まれました。

 

瀬戸内寂聴の『美は乱調にあり』は1965年、吉田喜重監督の『エロス+虐殺』は1970年です。

つい昨年の2010年には、中森明夫の『アナーキー・イン・ザ・JP』という青春小説も生まれました。

 

そのおもしろさは折り紙つきと居直りたくもなるところです。

 

 

ただ、大杉栄の人物や、その影響の広がりを知らない若い読者にも、この『自叙傳』のおもしろさを訴えてみたい。

 

そんなわけで、ちょっと突飛なブックリストをつくってみました。

これらの本を読んでいる友人たちに、ぜひ大杉栄の『自叙伝』をそっとすすめてみていただけないでしょうか。

 

 

そのいやがるのを無理押しつけに、『不如帰』を借りてきて読ました。先生、最初の間はむずかしそうな顔をしてページをめくっていたが、だんだん眉の間の皺をのばしてきた。とうとうしまいにはそのさざえのような握り拳でほろほろと落ちる涙をぬぐいはじめた。

(大杉栄著『自叙傳』より)

 

 

きっかけは「無理押しつけ」でも、それが功を奏することもありますから。

 

 

凡例:著者『書名』(刊行年)

  • 勝小吉『夢酔独言』(1843年)
  • 福澤諭吉『福翁自伝』(1899年)
  • 森鷗外『ヰタ・セクスアリス』 (1909年)
  • マヤコフスキー『私自身』(1922年、1928年)
  • 大杉栄『自叙傳』(1923年)
  • セリーヌ『なしくずしの死』(1936年)
  • 太宰治『正義と微笑』(1942年)
  • 坂口安吾『風と光と二十の私と』(1948年)
  • J.D. サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(1951年)
  • 岡本太郎『青春ピカソ』(1953年)
  • 坂井三郎『大空のサムライ』(1953年)
  • 殿山泰司『三文役者あなあきい伝』(1965年)
  • 瀬戸内寂聴『美は乱調にあり』(1965年)
  • 司馬遼太郎『坂の上の雲』(1969年)
  • 庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』 (1969年)
  • 吉村昭『関東大震災』(1973年)
  • ジャン・ルノワール『ジャン・ルノワール自伝』(1974年)
  • ポール・オースター『ムーン・パレス』(1989年)
  • 島田雅彦『君が壊れてしまう前に』(1998年)
  • 四方田犬彦『ハイスクール1968』(2001年)
  • 佐藤優『私のマルクス』(2007年)
  • 坂本龍一『音楽は自由にする』(2009年)

 

大杉栄も殿山泰司も、よく読み、よく書いた人でした。
大杉栄も殿山泰司も、よく読み、よく書いた人でした。

2011年

9月

08日

『自叙傳』の束見本ができました

こんばんは。

 

さて、大杉栄『自叙傳』の続報です。

 

本日、原稿データを市ヶ谷の大日本印刷に持参し、これで制作は一段落。

これから印刷と製本にはいります。

 

初版の3,000部は、来週9/16(金)にでき、その日のうちに問屋に搬入、早い店は即日店頭にならびます。

 

 

束見本もできました。

 

先日ご案内した装丁から、ガラッと雰囲気を変えました。

24ミリのもっさりした厚みと、きっぱりした白の取り合わせが、なんだかお茶目で、こちらを採用しました。

 

来週末から、全国150余の書店の店頭を飾ります。

お手にとっていただけるとうれしいです。

 

たまごっちみたいな本です。
たまごっちみたいな本です。

2011年

9月

07日

9/16(金)、大杉栄・伊藤野枝を悼む!

さて、お知らせです。

 

9/16(金)に、大杉栄をめぐるイヴェントが企画されています。

88年前の1923年、大手町の憲兵隊本部で「甘粕事件」のあった日です。

 

 

◉大杉栄・伊藤野枝 追悼「アナーキー・イン・ザ・JP」

 

 2011年9月16日(金)

   12:00〜 墓参献花@静岡市沓谷霊園(静岡市葵区沓谷1-174)

   19:00〜 中森明夫 公開座談@馬場町会館(静岡市葵区馬場町65-3)

 

 お問い合わせ 鈴木大治 090-3455-6807 soi(at)ayamex.com

 

 

チラシもかっこいいので、できるだけ大きく転載してみました。

どうぞご覧ください。

 

 

目をこらすと、ごく小さな文字で、つぎの記載もみられます。

 

「パチモンでは決してない、着れば愛人の2人や3人すぐにできてしまうこと請け合い、ファッショナブルな大杉栄アナキストTシャツを販売いたします。」

 

秋の服飾計画に取り入れてみたい気がします。

 

東京行きの新幹線で、大杉栄アナキストTシャツを着ている男がいれば、それが私です。
東京行きの新幹線で、大杉栄アナキストTシャツを着ている男がいれば、それが私です。

2011年

8月

30日

大杉栄の『自叙傳』制作快調!

おはようございます。

夏の終わりの朝は、気持ちがいいですね。

 

東京も爽やか、まるで高原の朝です。

 

 

さて、

 

9月16日をめがけて、第2弾の新刊を準備しております。

 

第2弾は、大杉栄の『自叙傳』。

未完ながら、氏が技巧をこらした最高傑作ともいわれる作品です。

 

岩波文庫や中公文庫をすでに読んでいる方には、その物語の抜群のおもしろさは申しあげるまでもないことでしょう。

 

「でも、大杉栄の自筆原稿はどんなだったんだろう。」

 

そこで土曜社版では、一つ工夫をほどこしました。

底本の見なおしです。

 

これまで底本に採用されてきた改造社版『自叙傳』(1923年)には、大杉栄の死後、おそらく改造社の編集者の手で、ちょいちょい加筆・修正された箇所がみられます。

 

対して、1921年から1923年にかけて月刊『改造』に連載された初出では、大杉栄らしい伸びやかな文体がより生々しく感じられます。

 

なにしろ連載当初、大杉栄は36歳です。

自叙伝といっても、青春小説のようなみずみずしさ。

 

土曜社版は、この連載にさかのぼって構成しました。 

読みくらべてみていただければ幸いです。

 

 

昨日、原稿を印刷所に渡し、ようやくほっと一息つきました。

 

ジャケットも、「これで行こう」とデザイナーと打ち合わせをしました。

9月16日の発売にむけて、進捗を随時報告していきます。

 

 

出獄の日のすがたなので、頬もこけて見えます。
出獄の日のすがたなので、頬もこけて見えます。

2011年

8月

12日

『日本脱出記』第2刷に気をつける

こんばんは。

 

さて、『日本脱出記』第2刷ができました。

初の増刷は、3,000部です。

 

うち700部を即日、問屋の JRC に納入しました。

 

品切れでやむなく保留していたご注文も、きょうから動きはじめています。

 

 

増刷はできたが、注文はパタリと止む——。

そんな恐れを相手にせず、ドシドシ宣伝につとめます。

 

 

第2刷の奥付。第1刷と一箇所だけ本の仕様を変えました。気づいてもらえるとうれしいのですが。
第2刷の奥付。第1刷と一箇所だけ本の仕様を変えました。気づいてもらえるとうれしいのですが。

2011年

8月

06日

「出シュッパン記」が『新潮』に出ました

おはようございます。

土曜日の朝です。

 

 

さて、一つ宣伝をさせてください。

 

あす発売の『新潮』9月号に、「出シュッパン記」なる短文を寄稿しました。

「しゅつ しゅっぱん き」と読みます。

 

もくじは、新潮社ウェブサイトをごらんください。

 

早いところでは、きょうにも書店に並んでいるかと。

 

ぼくの文章はともかく、石川直樹+岡田利規+坂口恭平の3氏による討議が実におもしろいので、ぜひ手にとってみてください。

 

 

余談です。

 

学部のころ、書く人間でありながら、書こうとしない親友がいました。

 

「『新潮』から執筆依頼がくるまで、文学的純血をまもっているつもりかい?」

 

といって、けしかけたものです。

 

 

鮮やかな黄色がまぶしい。グリマー・ツインズの図。
鮮やかな黄色がまぶしい。グリマー・ツインズの図。

2011年

8月

03日

『日本脱出記』増刷中!

こんにちは。

 

 

さて、うれしいご報告です。

 

4月の『日本脱出記』初版がついに完売し、第2刷を発注しました。

 

第2刷は、3,000部。

来週出来予定です。

 

 

ここで少し、業務連絡をさせてください。

 

>書店のみなさまへ

一時品切れにおちいり、ご迷惑をおかけしますが、しばしお待ちいただければ幸いです。

来週には、出来たてほやほやの新しい本をお手元にお届けします!

 

 

NHK「週刊ブックレビュー」放送の反響を甘く見ていました。

思いもかけない広がりで、各地から続々注文がはいり、あわてて増刷を発注したしだいです。

 

同番組は、今週8/5(金)12:00-12:54に再放送があるそうです。

お時間がゆるせば、ぜひご覧ください。

 

 

2011年

7月

29日

「川村直輝のTOKYOスタイルウォーズ」連載開始!

こんにちは、

 

 

さて、人気ヘアスタイリスト・川村直輝氏の連載が本日スタートしました。

 

その名も、「川村直輝のTOKYOスタイルウォーズ」。

 

「土曜日のヘアサロンに行ってはいけない理由」

「カットモデルの損得勘定」

「仕上がりが気に入らなかったとき、取るべき行動は?」

 

など、

 

ヘアスタイルをめぐって案外知られていないあれやこれやを、現役トップスタイリストの著者がおしみなくお伝えします。

 

「自らとヘアスタイルとがシンクロした瞬間に生み出される相乗効果——、仕事に恋愛、そして自身のコンプレックスさえも愛せることを知ってほしい。」

 

川村直輝氏の新連載に、どうぞご注目ください。

 

 

 

◉タ イ ト ル

「川村直輝のTOKYOスタイルウォーズ」

(かわむら なおき の とーきょー すたいる うぉーず)

 

◉連 載 期 間

2011年7月29日(金)スタート(毎週金曜連載)

 

◉も く じ

第1回「ヘアサロン業界の華麗なる劣等生」 7/29公開

第2回「武器を手にしたとき」 8/5公開予定

第3回「武者震い」 8/12公開予定

宥海さんによる写真もどうかお楽しみに。
宥海さんによる写真もどうかお楽しみに。

2011年

7月

23日

『新潮』に文章を寄せました

こんにちは、

土曜日の昼下がりをいかがおすごしでしょう。

 

 

さて、当ブログの筆者が、月刊『新潮』に文章を寄せることになりました。

 

タイトルは、「出シュッパン記」。

土曜社の創業をめぐる、あれやこれやについてです。

 

 

ことの経緯は、こんなでした。

 

さる水曜未明、同誌の編集部から原稿依頼が届きました。

分量は2600字、見開き2ページで掲載予定のこと。

 

はたして自分につとまるか、逡巡がありました。

というのも、ほとんど文章を書いた経験がないからです。

 

明けてその晩、編集長の矢野氏とお会いしました。

で、神楽坂を離れるころには、

 

「あのことを書こう!」

「このことも書きたい。」

 

心がわくわく騒いでいました。

 

 

へたな文章でも、正直に書こうと試みました。

 

8/7(日)発売です。

 

おそらく、つっこみどころも満載しています。

よろしければ、手に取ってみてください。

 

 

今年107年目の文芸誌『新潮』8月号。「出シュッパン記」は9月号に掲載されます。
今年107年目の文芸誌『新潮』8月号。「出シュッパン記」は9月号に掲載されます。

2011年

7月

17日

獄中のホリエモンに本の差し入れを

おはようございます。

3連休をいかがおすごしでしょうか。

 

 

ここ数日、ある相談を周囲に持ちかけていました。

 

相談というのは、獄中のホリエモンに本を差し入れできないか、ということです。

 

堀の中にあって、なお発信力を保つホリエモンが、

 

「逮捕される前に、大杉栄の『日本脱出記』を読みなさい!」

 

とでも発言してくれれば、話題をつくることができます。

本屋というのは、ずるいもので、こんなことまでも考えてしまうんですね。

 

ところが、獄中に商売を持ち込もうとするのは、いまにはじまったものではなく、受刑者の商業利用の歴史は、少なくとも20世紀の初頭にまでさかのぼることができます。

 

 

  断頭台の歯のなかに投げ込まれて

 

  どなるのは、

 

  「ヴァン・ホーテンのココアをお飲みなさい!」

 

  マヤコフスキー作「ズボンをはいた雲」(1915年)より

 

 

革命の前、帝政ロシアでは死刑囚に最後の言葉を発表する権利が与えられていたそうです。

 

その権利を、オランダのヴァン・ホーテン社が買い取ったそうな。

詳しくは、『マヤコフスキー選集』(飯塚書店、1964年)を読んでみてください。

 

 

さて、

 

そんなとんでもないことを考えていたら、平仄をあわせるかのように、月刊『救援』(救援連絡センター)に『日本脱出記』の書評が出ました。

 

「『日本脱出』で大杉が為そうとしたことは永遠に未完であるが5年後には東アジアのアナキストたちが東方無政府主義者連盟を上海で結成する。」

(亀田博氏、『救援』第507号、2011年7月10日)

 

 

この救援連絡センターのウェブサイトには、次の記載があります。

 

「(前略)逮捕されたらどうすればいいか、黙秘とはなにか、留置場生活はどのようなものか、日常的に心がけることはなにかなどについて、救援連絡センターのこれまでの蓄積を踏まえて詳細に紹介しています。逮捕される前に必ず読んでおいてください。」

 

 

いやはや。

 

 

韓国語の教科書を持ち込むなんて、堀江貴文氏も「一犯一語」のひそみにならっているのでしょうか。
韓国語の教科書を持ち込むなんて、堀江貴文氏も「一犯一語」のひそみにならっているのでしょうか。

2011年

7月

15日

『日本脱出記』がテレビに登場します

おはようございます。

 

さて、『日本脱出記』がテレビに登場することになりました。

 

番組は、NHK-BSプレミアム「週刊ブックレビュー」

7/30(土)早朝6:30〜7:24の放送です。

 

再放送もあるそうです。

 

8/1(月) 2:15~3:09 ※日曜深夜。

8/5(金) 12:00~12:54

 

『日本脱出記』を紹介してくれるのは、作家の明川哲也氏。

佐藤良明氏と華恵さんとの3人が、それぞれ持ち寄った本を合評するとのこと。

 

 

明川氏といえば、「ドリアン助川の正義のラジオ ジャンベルジャン!」(ニッポン放送、毎週土曜日23:30スタート)のパーソナリティとしての活動が鮮烈です。

90年代後半に青春を過ごした世代には、思い入れのある方も少なくないことでしょう。

 

かくいう自分も、高校生の深夜に「正義のラジオ」がセックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」を鳴らしはじめると、心もちボリュームをしぼって密かに聴き入ったものです。

大正時代の「アナーキー・イン・ザ・FR」ともいうべき、『日本脱出記』を紹介いただくのも奇しき縁でしょうか。

 

 

初回の放送は土曜の早朝。

というわけで、独りで見ることになりそうですが、楽しみです。

 

 

TSUTAYA三軒茶屋にこれから持参します。
TSUTAYA三軒茶屋にこれから持参します。

2011年

7月

13日

『日本脱出記』が「上半期ベスト1」

おはようございます。

 

 

さて、『日本脱出記』キャンペーンの続報です。

 

『本の雑誌』8月号で、『日本脱出記』が読者アンケート「私の上半期ベスト1」の1冊に選ばれました。

 

一部を抜粋してみます。

 

「あっという間に読み終えると、1920年代前半の日本、上海、そしてパリの喧噪、そこかしこを這いまわるひとりの思想家、活動家の激しい息づかいが眼前に迫っていた。」(立川直人氏・会社員47歳・新潟市)

 

 

ベスト1の朗報は、有隣堂のU氏がもたらしてくれました。

氏には、いつもよい知らせをいただくばかりです。

いつかよい知らせでお返ししたい、とチャンスをうかがっているしだいです。

 

 

ブログの更新を数日なまけていましたので、ご心配をいただいた方もあるやもしれません。

 

ところが実際は、それと裏腹に、次への展望がひらけていく予兆の数日でした。

 

展望のいくつかを先まわりしてお知らせしますと、

 

  • 『日本脱出記』が、NHK-BS「週刊ブックレビュー」(7/30)で放送されること。
  • 100年余の老舗文芸誌から、『日本脱出記』出版事情をめぐる随筆の寄稿依頼のあったこと。
  • 9月新刊のジャケット装画に、二科展から撤去されたいわくつきの傑作を掲載できそうなこと。

 

順を追って報告していきますので、引き続き、あたたかく見守っていただければ幸いです。

 

 

当号は、秋葉直哉氏の「『小沢書店の影を求めて』について」も収載。出版関係者は必読です。
当号は、秋葉直哉氏の「『小沢書店の影を求めて』について」も収載。出版関係者は必読です。

2011年

6月

30日

「多喜二がブームになるなら大杉はもっと売れていい」(武田惇志氏)

おはようございます。

7月です。

 

ここ数日、秋の新刊を静かに準備しています。

 

 

さて、隔月刊『インパクション』(180巻、2011年6月25日発行)に『日本脱出記』書評が出ました。

 

「異国で巻き起こす黒旋風、まるで水滸伝だ。」(武田惇志評)

 

単なる書評を越えて、武田氏の文章自体が、勢い余っていて面白い。

痛快です。

 

ぜひ書店で手に取ってみてください。

 

 

『日本脱出記』と『インパクション』。
『日本脱出記』と『インパクション』。

2011年

6月

24日

話題の『往来っ子新聞』トップに『日本脱出記』が!

話題の『往来っ子新聞』(2011年4月23日)
話題の『往来っ子新聞』(2011年4月23日)

おはようございます。

静かな土曜日の朝です。

 

 

さて、東京は千駄木の『往来っ子新聞』(往来堂書店、2011年4月23日号)に『日本脱出記』が登場しました。

 

記事は、web 版で読むことができます。

 

しかも、同紙 6月3日号の売上ランキングによると、その栄えある第1位の座を『日本脱出記』が占めています!

 

 

ところで、

 

唐突に「僕はうわさ話が好きだ」といったらおかしいでしょうか。

 

うわさはうわさを誘い、事実からはなれて流布します。

うわさにまどわされて判断をまちがう恐れも、無きにしもあらず。

 

それでも、うわさをやりとりしていると、おなじ星の住人というか、おなじ穴の狢(むじな)というか、ともかく同時代に生きる仲間という気がしてくる。

 

で、日々せっせとうわさの交換につとめるというわけです。

 

 

本をめぐる現場でも、うわさ話に乗せた情報交換が盛んです。

 

印刷された情報をあつかう仕事だけに、そこからはみ出して印刷されない情報に、かえって愛着を持つのかもしれません。

 

うわさのやりとりから、

 

「この手の本なら池袋のN氏が得意なはず。相談に行ってごらんよ。」

 

など、有益な情報につながることも多々。

 

 

往来堂書店は、そんなうわさのチャンピオンです。

 

(往来堂書店の方々がうわさ好き、というわけではありませんので、誤解のなきようお願いします。)

 

ここ数日にかぎっても、各地で話題にのぼりました。

 

  • 「千駄木の本屋が面白いらしいわね」(表参道・ブティック経営者)
  • 「往来堂で『日本脱出記』を見て、仕入れてみようと思ったのよ」(表参道・山陽堂書店)
  • 「往来堂のOさんとはお知り合いですか?」(根津・フードライター)

 

 

と、数々の好意的なうわさに接し、そのつど自分の勝手なコメントを加えるなど、往来堂書店をめぐるうわさの伝達ゲームにドシドシ参加しながら、打ち明けると、まだ一度も同店を訪問したことがないんです。

 

でも、すごいに決まっている。

 

 

「百聞は一見にしかず」ばかりが真理じゃないぞ、なんて力説している暇があるなら、近日しっかり千駄木・往来堂書店を見学に行こう。

 

こう思うしだいです。

 

 

2011年

6月

21日

「なんともカッコイイ!」(中森明夫氏評)

こんばんは、

 

 

さて、本日発売の『週刊朝日』に『日本脱出記』の記事が出ました。

掲載は99ページ、中森明夫氏の人気連載「本まわりの世界」です。

 

 

「大震災・原発事故・政治の無策(もはや無政府状態!)、ニッポンの終焉が叫ばれる今、復活した百年前のアナーキストの言葉を収めたペーパーバックをポケットに突っ込んで、21世紀の若者たちが古い日本を脱出する。」

(中森明夫、『週刊朝日』2011年7月1日号)

 

全文を転載したいほど嬉しい書評なのですが、そこは我慢をして、一文だけ引用してみました。

 

『アナーキー・イン・ザ・JP』の中森明夫氏による『日本脱出記』書評の全容は、いま書店に並んでいる『週刊朝日』に掲載されています。

 

ぜひ書店で手に取ってみてください。

 

 

今回の掲載を知ったのは、本書ブックデザインを担当した弟からの電話でした。

彼が中森明夫さんのツイッターをフォローしていたんですね。

 

「悪い知らせの内容は、その話し手にも感染する」(シェイクスピア)といわれますが、こうした朗報はまるで反対の効果があるようです。

 

 

中森明夫氏による書評全文がこの中に。
中森明夫氏による書評全文がこの中に。

2011年

6月

16日

「未来ちゃん」とパパっ子の「魔子ちゃん」

おはようございます。

東京は冷涼な朝です。

 

 

さて、表参道交差点すぐの山陽堂書店で、大杉栄の『日本脱出記』が陳列されています。

 

◉山陽堂書店 正面ウインドウ

 

隣りにみえる赤い服の少女は、その剽軽な笑顔と屈託のない泣きっ面で、いま東京中の書店店頭を飾っている人気の「未来ちゃん」です。

 

そういえば、大杉栄の子煩悩は有名でした。

 

少し長くなりますが、「日本脱出」の布石で、6つになる一番上の女の子を同志の家にやるシーンを引用してみます。

 

 

 「こんどは魔子の好きなだけいくつ泊まってきてもいいんだがね。いくつ泊まる? 二つ? 三つ?」

 

 僕は子供の頭をなでながらいった。その前に二つ泊まった翌朝僕が迎いに行って、彼女がだいぶ不平だったことがあったのだ。そしてこんどもやはり、「二つ? 三つ?」といわれたのに彼女は不平だったものと見えて、ただにこにこしながら黙っていた。

 

 「じゃ、四つ? 五つ?」

 

 僕は重ねて聞いた。やはりにこしながら、首をふって、

 

 「もっと。」

 

 といった。

 

 「もっと? それじゃいくつ?」

 

 僕が驚いたふりをして尋ねると、彼女は掌(てのひら)の上に右の手の中指を三本置いて、

 

 「八つ。」

 

 と言い切った。

 

 「そう、そんな長い間?」

 

 僕は彼女を抱きあげてその顔にキスした。そして、

 

 「でも、いやになったら、いつでもいいからお帰り。」

 

 と付け加えて彼女を離してやった。彼女は踊るようにして、M〔村木〕といっしょに出かけて行った。

 

(大杉栄著『日本脱出記』より)

 

 

『日本脱出記』には、密航記の挿話として、留守の魔子ちゃんが尾行を煙にまいて活躍するシーンもあります。

 

子供の邪気の無さに、大杉栄もどれだけ救われたことでしょう。

 

 

表参道の山陽堂書店では、6/24(金)に『本屋と出版の「未来ちゃん」。』というトークショーがあるそうです。

 

山陽堂書店ウェブサイト

 

同店では、『未来ちゃん』写真展も開催中です。

気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

 

 

2011年

6月

08日

「東横イン」の大杉栄

パリにつくとすぐ、仲間の一人の女に案内されて、その連中の巣くっている家の近所の、あるホテルへ連れて行かれた。(大杉栄著『日本脱出記』より)

 

 

いきなり引用ですみません。

 

ホテルといえば、今月は「東横イン」の客室情報誌『たのやく』で『日本脱出記』が紹介されています。

 

「東横イン」は各地に242軒、4万超の客室を擁する全国チェーン。

 

その情報誌は、簡単なかけ算で、毎月ウン十万の読み手の目にふれる可能性があるそうです。

 

「客室情報誌の読者数」

4万室 × シングル × 30日 × 稼働率70% = 84万人

 

 

大杉栄の冒険よろしく、よもや当局の眼をあざむく偽名の客もないでしょうが、潜り込んだホテルの一室で『日本脱出記』を偶然見つける、そんな場面を想像してみたい気もします。

 

 

2011年

6月

05日

渋谷のパルコで、「コリャ面白い」

こんばんは。

 

 

さて、リブロ渋谷店の名物企画「著名人の本棚」で『日本脱出記』が紹介されています。

 

今回の「著名人」は作家の奥泉光さんで、「この文体はとにかく面白い」という3冊の一つに『日本脱出記』が挙げられています。

 

厳密にいえば、奥泉さんの本棚の『日本脱出記』は、土曜社版ではなく岩波文庫版らしいのですが、こういう「はみ出し」は嬉しいかぎりです。

 

◉リブロ 渋谷店(「奥泉光さんの本棚」)
◉リブロ 渋谷店(「奥泉光さんの本棚」)

 

隣りで「コリャ面白い」と見えるのは、『福翁自伝』です。

 

福沢諭吉の『福翁自伝』は、いまも慶應義塾の新入生に全員配布されているそうです。それだけでも毎年数千の若い読者を獲得し続けているはずの、自伝文学の恐るべきベストセラーですね。

 

「この文体はとにかく面白い」のもう一冊は、勝小吉の『夢酔独言』です。

 

 

他にも、奥泉氏による衒いのないストレートなコメント付きで、興味深い本が多数展開されています。

 

選書リストも配布中です。

本を読んで「コリャ面白い」と膝を打ちたい方に、おすすめします。

 

 

2011年

6月

01日

大杉栄の『日本脱出記』が「ハニカム」に登場!

いきなり宣伝です。

 

 

ついに、『日本脱出記』が人気ウェブマガジン「ハニカム」に登場しました。

 

ウェブマガジン「ハニカム」

関東大震災直後の問題のベストセラーが、ペーパーバック版でいま蘇る。

 

 

ここで、当ブログの筆者の、ごく私的な感慨を記すことをお許しください。

なんでもないことなので、お急ぎの方は、ぜんぶすっ飛ばしていただければ幸いです。

 

 

三重県の高校生だった頃——、

 

隣町の学校から帰宅すると、毎晩やるべきことを官製はがきみたいな紙切れに書き出して、一つ一つこなしては赤いペンで消していくという奇妙な習慣がありました。

 

思えば、稚拙な「TO DO リスト」だったかもしれません。

 

それにしても、毎晩、自宅の部屋のほかに行くところもなく、味気ない高校生活だったものです。

 

でも、そこは前途洋々たる十代の若さで、その単なる紙切れは、ある若気の工夫によって光り輝いていました。

 

その紙切れに、あこがれの人物の名前を日替わりで冠していたんですね。

 

「このリストをぜんぶこなせば、俺も彼のようになれるんだ」と。

前途洋々たる高校生は、毎晩、まじめにそう考えていたんです。

 

いったい、数学やら日本史の参考書を読むこととミック・ジャガーへのあこがれにどんな種類のつながりを見いだせたものか、いまとなっては理解に苦しむのですが、きっと純粋だったんですね。

 

高校の3年間で、紙切れは、ゆうに500枚を超えていました。

 

どんな人物の名前を書き出していたかは、もうすっかり忘れてしまいました——、

というのは嘘で、何人かの名前はちゃんと覚えているのですが、そっとしておこうと思います。

 

 

さて、本題に戻ります。

 

そんな、たっぷり時間のあった高校生の夜に、独りで大切に読んでいた雑誌が『米国音楽』でした。

 

当時の編集長・川崎大助氏による一節はいまも忘れません。

「クラプトンのアンプラグドでも聴いていろ——」

 

前後の文脈は忘れてしまったのですが、成熟や安定なんてくそくらえというような文意だったと覚えています。

 

 

その川崎大助氏による今回の『日本脱出記』の書評です。

当ブログの筆者の感慨のほども、お察しいただけるでしょうか。

 

 

2011年

6月

01日

「JRC ならバンバンやります!」

おはようございます。

 

6月にはいり、『日本脱出記』の補充注文がまた増えてきました。

 

 

土曜社の本は、その8割が神保町の JRC(人文・社会科学書流通センター)という問屋を介して、各地の書店に配達されています。

 

昨日も同社から数回めの補充注文があり、スーツケースに本を載せて、喜んで納品してきました。

 

この JRC については以前、新宿の有力書店の某氏からも、「JRC ならバンバンやりますよ!」と力強い推薦をいただいていた経緯がありました。

 

「バンバンやる」というのは、流通につきまとう諸事情の懸念なく、販売の最大化をめがけて背中を気にせず突き進む、といった含意があります。

 

おかげさまで『日本脱出記』は、ほんとうに言葉どおりの展開になっています。

 

 

さて、きょうは、神保町 JRC の正面玄関を写真でご紹介します。

 

 

姜尚中、宮台真司共著『挑発する知』(双風舎、2003)のポスターが見える。
姜尚中、宮台真司共著『挑発する知』(双風舎、2003)のポスターが見える。

2011年

5月

23日

大杉豊さんが大杉栄を語る

先週末の5/21(土)は、『日本脱出記』刊行記念「大杉豊さんトークショー」でした。

 

当日のようすを、2枚の写真に納めましたので、ご覧いただけると嬉しいです。

 

大杉豊さんが語る。
大杉豊さんが語る。
土曜の夜のジュークジョイントならぬ、土曜の夜のトークショー。新宿二丁目のカフェ・ラバンデリア。
土曜の夜のジュークジョイントならぬ、土曜の夜のトークショー。新宿二丁目のカフェ・ラバンデリア。

 

おかげさまで、『日本脱出記』は、しかるべき読者の手元に届きつつあるようです。

ゆっくり、じわじわ進みます。

 

◉文教堂書店 渋谷店(新刊台)

既刊書をからめた展開。3回におよぶ補充注文の秘訣がここに。
既刊書をからめた展開。3回におよぶ補充注文の秘訣がここに。

◉クレヨンハウス ミズ・クレヨンハウス(女性史)

中央公論版『大杉栄自叙伝』の解説は、クレヨンハウスのオーナー落合恵子氏という経緯もあり。
中央公論版『大杉栄自叙伝』の解説は、クレヨンハウスのオーナー落合恵子氏という経緯もあり。

2011年

5月

21日

藤原ヒロシさん製作のスタバで、大杉栄の『日本脱出記』デビュー!

おはようございます。

 

きょうは、大杉豊さんトークショーです。

スケジュール完璧、整理整頓、準備万端ととのっています。

 

当日の飛び入りも歓迎します。

新宿二丁目のカフェ・ラバンデリアにふらりとお越しください。

 

 

さて、新しいニュースです。

 

藤原ヒロシさん製作の STARBUCKS COFFEE コンセプトストアに、大杉栄の『日本脱出記』が登場しました。

 

右手にカフェモカを、左手には黒い『日本脱出記』を——、

というシーンが見られるのでしょうか。

 

表参道です。

機会があれば、チェックしてみてください。

 

 

STARBUCKS COFFEE 表参道B-SIDE店
渋谷区神宮前5-11-2

 

 

◉STARBUCKS COFFEE 表参道B-SIDE店

スターバックスの大杉栄。そういえば、藤原ヒロシさんの生まれた伊勢は、大杉栄とも因縁浅からぬ土地。大杉栄の下手人・甘粕正彦は伊勢で育ち、「甘粕事件」の仇討ちで、その家族が松坂駅前で襲撃されたりしているのです。
スターバックスの大杉栄。そういえば、藤原ヒロシさんの生まれた伊勢は、大杉栄とも因縁浅からぬ土地。大杉栄の下手人・甘粕正彦は伊勢で育ち、「甘粕事件」の仇討ちで、その家族が松坂駅前で襲撃されたりしているのです。

2011年

5月

19日

5/21(土)「大杉豊さんトークショー」@新宿カフェ・ラバンデリア

 

さて、土曜日のイヴェントをご案内します。

 

 

『日本脱出記』刊行記念「大杉豊さんトークショー」

 

□ 日 時:5/21(土)19:00-
□ 会 場:カフェ・ラバンデリア

新宿区新宿2-12-9 tel. 03-3341-4845

□ 主 催:アナキズム文献センター

□ 観 覧:無料

 

トークショーの詳細は、こちら

 

とくに座席指定はありませんので、ふらりとお立ち寄りいただければ幸いです。

 

 

会場では、「アナキズム一箱古本市」も開催されます。

というより、古本市がメインで、トークショーは特別企画という位置づけです。

 

また、会場の付近には、イレギュラー・リズム・アサイラムや模索舎などの個性派書店もあります。

 

さらに、大杉栄をパリで案内した画家・林倭衛ゆかりのバー「風紋」も、トークショーの終わる頃にはその灯りをともしているはず。

 

  • イレギュラー・リズム・アサイラム 新宿区新宿1-30-12-302
  • 模索舎 新宿区新宿249
  • 風紋 新宿区新宿5-15-2

 

 

毎日いろいろありますが、今週の土曜日は新宿二丁目で、大杉栄を追いかけてみてはいかがでしょう。

 

 

2011年

5月

17日

直納ほど楽しい仕事はない

おはようございます。

 

『日本脱出記』も発売から1ヶ月を越え、各地の書店からの補充注文が嬉しい毎日です。

 

補充注文も、都内の店であれば、できるかぎり持参・直納しています。

 

そのためのスーツケースも、ちゃんと買ってあるのです。

 

 

 

◉あゆみBOOKS 五反田店(新刊台)

補充注文を受けて直納。その場で、すぐ展開してもらう。快感です。笑
補充注文を受けて直納。その場で、すぐ展開してもらう。快感です。笑

◉あゆみBOOKS 五反田店(店頭ウィンドウ)

五反田駅前の繁華街に面する。
五反田駅前の繁華街に面する。

◉八重洲ブックセンター 本店(1Fノンフィクション)

「土曜日に土曜社がきた!」と喜んで(?)もらいました。
「土曜日に土曜社がきた!」と喜んで(?)もらいました。

2011年

5月

11日

三軒茶屋キャロットタワーの大杉栄

カラフルな店内に、ぽっかり開いた白と黒のモノトーンの世界。

 

TSUTAYA三軒茶屋では今週、『日本脱出記』の看板が掲出されています。

 

 

ところで、映画『山下少年物語』(東宝東和、1985年)の、冒頭のシーンを覚えていらっしゃるでしょうか。

 

柔道の山下泰裕が生まれた日、おじいさんは嬉しさのあまり、三輪トラックに拡声器を積んで、町中に触れまわるんです。

 

「立派な赤ん坊が生まれました。4200グラムです。これからどうかよろしく——」と。

 

それから山下少年は金メダルに向かって、まっしぐらでした。

 

※遠い記憶なので、細かい点があやふやなことをお断りしておきます。

 

 

『日本脱出記』も発売から一ヶ月、おかげさまで、初動は順当です。

 

スパルタ式に育てあげるわけでもなく、あせらず、腰を据えて宣伝と拡販につとめてまいります。

 

 

2011年

5月

09日

「2年ぐらい、毎日運動会をやっていてもだいじょうぶ」

ゴールデンウィーク明けの月曜日——。

各書店から補充注文が届き、胸をなでおろしています。

 

 

「2年ぐらい、毎日運動会をやっていてもだいじょうぶ」

 

世界一を争う愛知県の某自動車メーカー幹部の発言と聞きました。

豊富な手元資金にたいする自負でしょうか。

 

土曜社が毎日運動会をやっていたら、恐らく2ヶ月です。

 

 

久しぶりのワーキングウィークが嬉しい、月曜日でした。

 

 

◉あゆみBOOKS 小石川店(新刊台)

旧小石川区は、かつて大杉栄も住んだ、ゆかりの土地です。
旧小石川区は、かつて大杉栄も住んだ、ゆかりの土地です。

◉TSUTAYA 三軒茶屋(話題の本)

三軒茶屋に「日本最大のアナキスト 大杉栄、最後の言葉」登場。なお、大杉栄が遭難したのは日蔭茶屋でした。
三軒茶屋に「日本最大のアナキスト 大杉栄、最後の言葉」登場。なお、大杉栄が遭難したのは日蔭茶屋でした。

◉丸善 日本橋店(人文)

大杉栄は丸善で、ファーブル『昆虫記』の原書を入手、獄中で翻訳を進めたそうです。
大杉栄は丸善で、ファーブル『昆虫記』の原書を入手、獄中で翻訳を進めたそうです。

2011年

5月

03日

「アイデアと移動距離は比例する」

ゴールデンウィークも、東京にへばりついています。

 

 

「アイデアと移動距離は比例する」(高城剛『70円で飛行機に乗る方法』より)

 

という説も、たしかに一理あるかもしれません。

古来中国では、馬上、厠上、枕上といわれるそうですし。

 

ところが、しぶとく持ち場を守っていればチャンスは転がりこんでくる——。

これもまた真理だと思います。

 

 

さて、昨日は、流水書房青山店から『日本脱出記』補充注文のファクシミリが届きました。

 

なかば痩せ我慢ですが、遠出せず、東京に残っていてよかったと思えたしだいです。

 

 

◉流水書房 青山店(文芸)

実に神経の行き届いた品揃え。その立体的な陳列は、たとえるなら、大艦巨砲主義から航空決戦論への発想の転換を思わせる。
実に神経の行き届いた品揃え。その立体的な陳列は、たとえるなら、大艦巨砲主義から航空決戦論への発想の転換を思わせる。

2011年

5月

01日

続『日本脱出記』書店展開の図

メーデーです。

 

1923年5月1日、大杉栄はパリのサン・ドニで激烈な演説をおこない、フランス当局に身柄を拘束されます。

 

演壇近くにいた四十ばかりの一人の女工らしいのが涙を流し流し、泣き声で「セエサ、セエサ」(そうです、そうです)と叫んでいた。

(大杉栄著『日本脱出記』より)

 

 

数年前のことです。

当ブログの筆者はサン・ドニで、ブラジルの歌手タニア・マリアのコンサートをみたことがあります。

 

激しくピアノをたたき、ユニゾンで歌う。

大股を開いたスカートの下はなにもつけていない——、という記事を日本で読んでいたのですが、恐らくそんなこともなく、コンサートは白熱して無事に終えたものです。

 

ごく個人的な感慨で恐縮ですが、ぼくにはこの『日本脱出記』の女工がどうしてもタニア・マリアの印象と重なってしまうのです。

 

 

さて、そんな無駄口はともかく、『日本脱出記』を販売してくれている勇気ある書店を本日もご紹介します。

 

 

◉ジュンク堂書店 池袋本店(日本思想・近代)

現代思潮社版『大杉栄選』店頭在庫がめずらしい。同店1Fの集中レジは長蛇の列。活況です。
現代思潮社版『大杉栄選』店頭在庫がめずらしい。同店1Fの集中レジは長蛇の列。活況です。

◉芳林堂書店 高田馬場店(日本思想および日本近代史)

『美少女伝説 レポート1968慶応大学の青春』(情況新書)がみえる。高田馬場は慶應関連も意外な売れ筋とのこと。
『美少女伝説 レポート1968慶応大学の青春』(情況新書)がみえる。高田馬場は慶應関連も意外な売れ筋とのこと。
高田馬場店では思想と歴史の2箇所で展開。後藤新平 - 杉山茂丸 - 頭山満 - 伊藤野枝 - 大杉栄という人脈がすけてみえる。
高田馬場店では思想と歴史の2箇所で展開。後藤新平 - 杉山茂丸 - 頭山満 - 伊藤野枝 - 大杉栄という人脈がすけてみえる。

2011年

4月

29日

バンクシー(Banksy)の『日本脱出記』

おかげさまで、『日本脱出記』取り扱い店が増えています。

 

4/29(金)現在、

北海道から沖縄まで、121の書店で販売中です。

 

 

各地の書店から注文のファクシミリが届くまでは、

 

「もし一冊の注文もなければ、バンクシーよろしく、無断陳列するしかない——」

 

思い詰めるわけでもなく、そう覚悟していたものです。

 

 

そのバンクシー(Banksy)のゲリラ陳列とは、たとえばこんな手法です。

 

「2006年の8月から9月にかけて、パリス・ヒルトンのデビューアルバムのフェイクを500枚制作、イギリスの48のレコードショップに勝手に設置」「いくつかのCDは店側が気がつく前に購入され、オークションでは750ポンドの値段がついた」(「Wikipedia」より抜粋)

 

750ポンドといえば、10万円ほどでしょうか。

 

 

そういえば、バンクシーのアイコンも「ゾウ」。

小鳥と巡航ミサイルという、背中に乗せているものの相違はありますが、奇妙な符合です。

 

Banksy 公式(?)ウェブサイト

www.banksy.co.uk

 

 

注:下記の図は、無断陳列したものではありません。

 

 

◉ブックファースト 新宿店(近代日本思想)

「堺〔利彦〕と僕との間にはその少し以前からある個人的確執があったのだ。」(大杉栄著『日本脱出記』より)」
「堺〔利彦〕と僕との間にはその少し以前からある個人的確執があったのだ。」(大杉栄著『日本脱出記』より)」

◉BOOKS PISMO(アウトロー)

ハマータウンの野郎どもに囲まれる。
ハマータウンの野郎どもに囲まれる。

◉タワーレコード 渋谷店(7F)

『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)の隣り。意気込みは、近いものがある。
『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)の隣り。意気込みは、近いものがある。

2011年

4月

24日

18:30に会場をオープンします

こんにちは。

 

『日本脱出記』刊行記念レセプションが、今夜に迫ってまいりました。

18:30 に会場をオープンし、みなさまの光臨をお待ちしております。

 

ゲストリストにお名前を頂戴していない方も、ふらりとお立ち寄りいただければ幸いです。

 


さて、これまでに頂戴したお問い合わせから、5点共有させていただきます。

 


1. ドレスコードは?
日曜の夜ですし、カジュアルにおこしいただければ幸いです。

 


2. 子供も楽しめる?
だいじょうぶです。全面禁煙で、ソフトドリンクもございます。

 


3. 友人も誘いたいのだけど?
歓迎光臨です。ぜひお声がけください。

 


4. 仕事帰りだけど……。
だいじょうぶです。大きな荷物は、クロークでお預かりします。

 


5. 食事は出るの?
会場の「M」では、おいしい軽食を用意しています。
また、近辺には、とんかつぽん太、Unice、Cha-noma などもございます。
再入場いただけますので、空腹時のご利用をおすすめします。


なお、今夜の見どころとしましては、
19:00 から Nicola Watson の LIVE がございます。

 


また、大杉栄の実弟の子息で本書解説の大杉豊氏も会場にかけつけてくれることになっています。

 


どうぞお見逃しなく!

 

 

2011年

4月

19日

急がなくても、そこに本屋があるじゃないか

いきなり本の話です。

 

高津淳著『いそがなくたって、そこに本屋があるじゃないか』(サンブックス、2004年)。

 

この書名が喚起するイメージから話題をはじめさせてください。

 

長くなりそうですので、お急ぎの方は途中の文章をすっとばして、最後の写真だけご覧いただければ幸いです。

 

 

本はなぜ売れるのか。

 

書籍販売を科学できないか——。さまざまな立場から、それこそ幾千の諸説が提出されてきた議論です。

 

いわく、

 

「魅惑的な装幀のせいだよ。」

「活字が魔力をもっているんだ。」

「コストパフォーマンスだよ、投資と同じでさ。」

「広告ありき、そもそも知られなけりゃはじまらない。」

 

などなど。

 

でも、結論は出ないことになっているのです。

 

「『変身譚』は、ピカソの古典主義的感興が最良の状態で発揮されていたにもかかわらず売れ行きは香ばしくなかった。しかしスキラは、愛書家という連中の気むずかしさを心得ていたので、大して気にもかけず、すぐに次の本の制作にとりかかった」(ブラッサイ著『語るピカソ』より)

 

ピカソの『変身譚(メタモルフォーシス)』ですら、販売は不振だったというんですね。

 

マルクスとエンゲルスの『資本論』も初版はわずか1,000部だったそうですから、なぜ本が売れるのか分からないのも道理、と開き直りたくもなるところです。

 

が、ここでは「街に本屋があるかぎり、われわれは本を買い続けるだろう」という独断のもと話を進めます。

 

 

すると当然、書店でどうやって本を選ぶかということが次の話題になるわけです。

 

そして、書店との付き合いにも、さまざまな方法があるようです。

 

  • 雑誌だけみる。
  • 面陳されている本だけをひと通り眺める。
  • 必要な書名をいきなり検索機でしらべる。
  • 新聞書評の切り抜きをみせて、書店員にたずねる。

 

「必要な本がピカピカ光って、向こうから知らせてくる」と豪語する達人もいます。

 

いずれにせよ、書店で本を選ぶには、スタイルの確立が必要です。

 

なにしろ、積み上げれば毎日3メートルにおよぶ新刊(※)が出版される現在です。

書店で本を選ぶ力は一個の技術といえるかもしれません。

 

※年間図書刊行点数:74,714(2010年実績)

 

 

少し脇道です。

 

似たような新譜の嵐という状況にあって、音楽業界では「全点面陳」という画期的なレコード店も編み出されました。

 

そう、渋谷は宇田川町のDMRこと、ダンスミュージックレコードです。

広い店内は、レコードがすべて面で陳列され、整然としています。

 

これも一つのありうる回答だと思います。

 

 

毎日3メートルの新刊の嵐で、本が選べない。

選べないから書店にも行かない。

そして本は読まない。

 

人口が減るのに、減らない新刊点数。

残業が増えるのに、減らない新刊点数。

 

海外へ眼を向けると、英国では、年間10万点を超える新刊が出るそうです。英語で書かれた本は、世界中で販売できるという事情を勘案しても、驚くべき数字です。

 

返品増加による業界のコスト負担というダメージはあるにせよ、豊富な新刊で出版大国への道なかば——と、あえて瘦我慢説を唱えてみたい気もします。

 

 

くだくだと述べてきました。

 

お伝えしたかったのは、この年間7万におよぶ新刊の山から『日本脱出記』を選び出し、店頭に展開してくれている全国117の書店に感謝してもしきれないということ。

これです。

 

 

膨大な出版流通をくぐり抜けて、『日本脱出記』はいま、書店に並んでいます。

 

読書するわれわれも、忙しい毎日で、なかなか書店に出向く時間を確保するのが困難です。

 

このダブルハンデを乗り越えて、しかるべき若干名の読み手が、各地の書店で『日本脱出記』を発見してくれるにちがいない。

 

微かな確率に、じっと期待を寄せているしだいです。

 

 

おかげさまで、一部の書店では売れはじめています。

奇跡の出会いを演出してくれている書店の図を下記に一挙掲載します。

 

 

◉紀伊國屋書店 渋谷店(日本史)

小林よしのり『ゴー宣道場』と半藤一利『昭和史』に挟まれて屹立
小林よしのり『ゴー宣道場』と半藤一利『昭和史』に挟まれて屹立

◉ジュンク堂書店 渋谷店(日本思想)

大杉栄の仕切り板もあります。『改造社と山本実彦』もみえる。
大杉栄の仕切り板もあります。『改造社と山本実彦』もみえる。

◉放文社 NHK店(新刊台)

『活劇 日本共産党』と。NHKでアナ・ボル論争再燃か。
『活劇 日本共産党』と。NHKでアナ・ボル論争再燃か。

◉リブロ 渋谷店(社会時評)

黒岩比佐子『パンとペン』と渡辺京二『黒船前夜』に挟まれて。
黒岩比佐子『パンとペン』と渡辺京二『黒船前夜』に挟まれて。

◉紀伊國屋書店 新宿本店(1階)

入口すぐ。都内某書店から「新宿本店でみて」と注文がきた。
入口すぐ。都内某書店から「新宿本店でみて」と注文がきた。
新宿本店では、こちらでも展開中。『何もしないで生きていらんねぇ』ECDの最新刊との並びが意味深。
新宿本店では、こちらでも展開中。『何もしないで生きていらんねぇ』ECDの最新刊との並びが意味深。

◉ジュンク堂書店 新宿店(近代日本思想)

西田幾多郎の存在感がすごい。
西田幾多郎の存在感がすごい。

◉タワーレコード 新宿店(文芸)

3面陳のド迫力。
3面陳のド迫力。

◉ブックファースト ルミネ新宿2店(新刊台)

2011年、出版業界で白と黒のツートンが密かに流行か。
2011年、出版業界で白と黒のツートンが密かに流行か。

◉ブックファースト ルミネ新宿1店(日本思想)

『梅棹忠夫のことば』と。『日本脱出記』の造本は、実は『知的生産の技術』も参照した。
『梅棹忠夫のことば』と。『日本脱出記』の造本は、実は『知的生産の技術』も参照した。

2011年

4月

17日

4/24(日)『日本脱出記』レセプション続報

こんにちは。

 

 

さて、4/24(日)『日本脱出記』刊行記念レセプションの続報です。

 

お知らせは、3つございます。

 

1.

土曜社版『日本脱出記』解説の大杉豊氏が、当日の会場にかけつけてくれることになりました。

 

寛いだ会場で、気さくに社交に応じてくれると思います。

 

幾千の逸話や証言からイメージされる稀代の風雲児・大杉栄の、血縁から人物に迫るまたとない機会です。

 

 

2.

オーストラリアはメルボルンから急遽、ニコラ・ワトスンの来日ライヴが決定しました。

 

20:00- LIVE Nicola Watson from Melbourne, Australia

 

短い時間ですが、特別にオリジナル曲を歌ってくれることになっています。

 

ニコラ・ワトスンは前日(4/23)にも、都内某クラブに出演予定とのこと。

前日の情報も、分かりしだい、当ブログでお知らせしたいと思います。

 

 

3.

タイムテーブルを決定しました。

 

4/24(日)当日は、9組のふぞろいなDJ陣がカラフルな音楽をお届けします。

 

『日本脱出記』刊行記念レセプション

18:30- 鈴木克巳(Cheering & Co.)
19:00- Frank Giarratani from Pittsburgh, Pennsylvania
19:30- 須川邦彦

20:30- 山内直己(Sweet Soul Records)
21:00- 大川英信(Praha)
21:30- 川村直輝(シマ)

 

続『日本脱出記』刊行記念レセプション

22:00- 杉森耕二(Rosso)
22:30- ASSHEADS
23:00- 豊田卓(『日本脱出記』装幀)

 

グーグルにも一切情報のない謎の ASSHEADS について、一言だけ宣伝させてください。

 

アパレル資本の某レコード店および御三家と称される某セレクトショップに勤務する2人組で、KITSUNE や 2 many DJs 、80KIDZ としばしば比肩される彼らの出演は、レセプションが延長戦にはいった 22:30 スタートです。 

 

 

以上、続報でした。

 

毎日いろいろありますが、4/24の日曜日は、楽しい時間をごいっしょできれば幸いです。

 

 

2011年

4月

16日

『日本脱出記』が、人気の「ウラゲツ☆ブログ」で高評!

おはようございます。土曜日の朝です。

 

 

さて、きょうは嬉しいニュースです。

 

熱心な読者家に人気の「ウラゲツ☆ブログ」で『日本脱出記』が高評されました。

 

「ウラゲツ☆ブログ」(2011年4月13日付)

 

月曜社の小林浩氏が実名で投稿するこの恐るべきブログでは、現代思想を中心に、書籍出版をめぐる記事が惜しみなく発信されています。

 

「恐るべき」というのは、難解な現代思想から複雑な出版事情までを一網打尽に整理して、実に分かりやすく伝えてくれる、その懇切さです。

 

また、「惜しみなく」というのも、掛け値のない形容で、白状すれば、同ブログの記事を読むたびに、

 

「えっ、そんな未訳の名著があったのか!」

「このリストでブックフェアを展開すれば、かっこいいだろうな!」

 

と、心地よく商売っ気を刺激されることも少なくありません。

同業者が密かにチェックする人気ブログの一つと思います。

 

 

この高評を糧に精進します。

 

 

2011年

4月

09日

『日本脱出記』全国105の書店で、スロウに発売

土曜日の昼下がり。

東京では雨も降りはじめ、春の読書をスロウに楽しむにはもってこいの日和です。

 

 

さて、『日本脱出記』は昨日、JRC(人文・社会科学書流通センター)を経由して、取次各社に搬入しました。

 

早い書店では、昨日から店頭に並んでいます。

 

ここで、少し感慨をこめて、発売までのいきさつを振り返ることをお許しください。

 

  • 先月3/26に「放文社 NHK店」で初受注。それまで1冊の受注もなかったこと。
  • 3/11の大地震で印刷・製本にとりかかることができず、やむをえず、発売を延期したこと。
  • 急遽会談を申し入れたJRCの後藤社長に3/31、新規取引を即日決定いただいたこと。
  • 翌日の4/1、JRC朝礼で同社スタッフの方々に、『日本脱出記』のセールスポイントを説明したこと。

 

同社スタッフの方々は、その日からすごいスピードで全国の書店から注文を集めてくれました。感謝するばかりです。

 

そして、『日本脱出記』はあす4/10(日)、全国105の書店で発売日を迎えます。

 

極端に走りつつ、どこか愛敬も感じさせる仕上がりになっています。

手元に置いておけば、いっそう愛着もわいてくる小さな一冊です。

 

『日本脱出記』取り扱い書店一覧を参考に、ぜひ書店で手に取ってみていただければ幸いです。

 

 

2011年

4月

06日

印刷所のトラック

おはようございます。

 

本日4/6(水)は、『日本脱出記』の出来日です。

朝から、そわそわと印刷所からの納品に備えています。

 

本日の納品は500部で、残る商品を4/8(金)に取次のJRCへ搬入すれば、その日のうちに配本がおこなわれ、早いところでは即日、黒い『日本脱出記』が書店店頭を飾ります。

 

印刷所のトラックは今ごろ青山通りあたりかな——、

 

などと想像してもしかたないのですが。

待ち遠しいです。

2011年

4月

03日

88年めの『日本脱出記』刊行記念レセプション

今般の大地震でも、在日外国人の「日本脱出」が報じられています。

 

1923年、大正の関東大震災の数ヶ月前。

大杉栄の「日本脱出」も、数々の憶測を呼んだ一大事件でした。

 

 

たとえば、だれが金を出したかという、旅費問題。

 

あろうことか、警察を担当する元内務大臣の後藤新平も嫌疑をかけられた一人でした。

 

それも無理からぬことで、後藤新平はその以前、大杉栄に金を出したことがあった——。

そして、その事実は『改造』連載(『自叙伝』)によって、広く知られていたんですね。

 

ところが実のところ、旅費を出したのは有島武郎なんです。

 

さすが有島武郎は、あっさり事実を認めます。

 

そして、新聞記者の取材に応じ、

 

「僕は大杉君とは立場が違うが、ああいう器局の大きい人物を、いたずらに日本のようなせせっこましい所に置いて、内輪喧嘩をさせておくのは惜しいような気がしたので、世界の大勢を見てきたほうがよかろうと考えたからである」

 

と声明を出しています。(大杉豊著『日録・大杉栄伝』より)

 

 

大杉栄帰国のニュースも大きく報じられました。

 

たとえば、1923年7月13日付『東京日日新聞』は、「凱旋将軍の都入り」と大見出しで伝えています。

 

帰国歓迎会もにぎやかで、銀座八丁目のカフェーパウリスタには、改造社の山本実彦はじめ錚々たる名士たちが会したそうです。

 

 

さて、前置きが長くなりました。

 

土曜社では、88年めの『日本脱出記』刊行記念レセプションを企画しております。

 

詳細は、4/24刊行記念レセプションをご覧ください。

 

音楽とアルコールだけで、堅苦しい式典は一切ありません。

ぜひ軽やかにおこしいただけると嬉しいです。

 

 

2011年

4月

02日

「××××××××××躍る。」

土曜日の朝です。

 

 

「ところで、なぜ土曜社という社名にしたんだい?」

 

と問われることが増えてきました。

すると、いくつか用意してある答えから、嬉しくなって答えるのです。

 

たとえば、かつて大杉栄と同志たちの「北風会」が毎週土曜日に開催されたことにちなんで——。

 

と、それらしくすまして答えてみたり。

でも、これは後知恵のひとつです。

 

 

ところで、大杉栄の『日本脱出記』には、こんな記述があります。

 

「××××××××××飛ぶ。×××××××光る。」

 

戦前の出版法による検閲で、削除された箇所は、組版で「×」の伏字を当てていたらしいのです。

 

戦後、検閲はなくなります。

 

伏字にされた箇所は、原稿にもどって復旧されるか、あるいは「何字削除」と印刷されるのが主流です。

 

原稿も見つからず復旧できない場合、こうなります。

 

「(8字削除)飛ぶ。(7字削除)光る。」

 

これに対して、土曜社版『日本脱出記』では、伏字は「×」のままとしました。

 

検閲のボリュームが、これで一目瞭然と考えてのこと。

時計はデジタルではなく、アナログの針式にかぎるというのと同じ理屈です。

 

 

さて、

 

「××××××××××躍る。」

 

これが土曜社の由来です。

 

あっさりしたもので、「土曜」の2文字に心が躍るから、というのがごく正直な気がします。

 

 

2011年

3月

28日

すごい書店

すごい書店でした。

 

松丸本舗。

 

出版業に身を置きながら、実は初訪問。

登りたい山をみつけたような、なんだか嬉しい気分です。

 

書籍の迷宮と表現したいような構えで、入口には、レベッカ・ソルニット著『災害ユートピア』(亜紀書房、2010年)が置かれていました。

 

 

さて、

 

迷宮に踏み込めば、大杉栄関連書もちゃんと一角を占めています。

 

その一角の手がかりとして、浅羽通明著『アナーキズム』(ちくま新書、2004年)が挙げられていました。

 

同書にも、「災害ユートピア」にかんする記述があります。

 

「なるほど。われわれも、阪神大震災に際して、広域暴力団山口組が食料炊き出しに尽力し、全国から若者がボランティアに駆けつけ、被災者たちには外の者にはわからぬ強い連帯が生じた間近な実例を知っている。これこそ、アナーキズムが説いてきた、自由連合と相互扶助のユートピアの実例ではあるまいか。」(浅羽通明著『アナーキズム』より)

 

ところが、大正の関東大震災では、ユートピアどころか、対極のディストピアが生まれ、異常な空気のなか、大杉栄は殺されてしまいます。

 

 

1923年から80有余年、

 

いわゆる「甘粕事件」の現場となった大手町の東京憲兵隊本部からほど近い、丸の内オアゾ・松丸本舗に、大杉栄最後の書『日本脱出記』が陳列されます。

 

松丸本舗——、すごい書店です。

www.matsumaru-hompo.jp

 

知的なめまいを感じたくなった日に、ぜひ訪れてみてください。

 

 

2011年

3月

26日

嬉しい初受注

おはようございます。

土曜日の朝です。

 

 

さて、昨日、嬉しい初受注がありました。

 

放文社NHK店が大杉栄著『日本脱出記』を平積みで販売してくださることに。

 

店長、ありがとうございます!

これからドシドシ宣伝・販促します。

 

NHKの渋谷放送センター1Fという立地ですので、あわよくば、放送関係者の目に留まって、『日本脱出記』が大河ドラマの題材になったり……、

 

しないか。

 

妄想も大河のごとく。

 

 

ところで、

 

4/1(金)発売の新刊が今ごろ初受注?

だいじょうぶか?

 

といぶかられる向きもあるかもしれません。

 

大震災の影響が、ここにも及んでいるのです。

これからドシドシ張り切っていきます。

 

 

2011年

3月

25日

大杉栄の『日本脱出記』が[本]のメルマガで紹介されました

こんにちは、土曜社です。

 

さて、『日本脱出記』が『[本]のメルマガ』(3/25号)で紹介されました。

 

記事は、こちらでご覧いただけます。

 

編集同人の朝日山さんとは、残念ながらまだ面識がありませんが、ご注目をいただき、ほんとうに励みになります。

 

 

そういえば、獄中で大杉栄と隣りあわせだったアナキスト、石川三四郎の筆名が「旭山(きょくざん)」というのです。

 

読みを変えれば、「あさひやま」とも読めるような……。

 

もしや朝日山さんの号も、石川三四郎から来ているのでは?

 

 

なんていう、虫のいい推測でした。

 

 

2011年

3月

20日

「牢屋の生活ほどのうのうするところはない」

大震災以後、取引先や友人と会う頻度がぐっと減っています。

細かい数字が好きで、ずっと統計をとっているので歴然です。

 

ところが、そのぶん、読書にあてる時間が増えているか、と問われれば、そんなこともないのです。

 

ただ、騒ぐ心を鎮めて、本を開くことのできる時間が、いつもより貴重に感じます。

 

 

「いつも忙しい、そして多勢の人との交渉の多い生活をしている僕には、実際なんの心配もないたった一人きりの牢屋の生活ほどのうのうするところはないのだ。」(大杉栄『日本脱出記』より)

 

 

大杉栄は、38歳の短い生涯で、6度(国内5、国外1)にわたり入獄と出獄を繰り返しました。 

 

そして、「一犯一語」とうそぶきながら、監獄で次々と外国語を習得するわけです。

 

獄中の読書。

 

これが案外、極上の読書方法なのかもしれません。

 

 

さて、『日本脱出記』の制作が一段落して、気がついたことがあります。

 

それは、なにかに似ているぞ、という感覚です。

 

 

『ヨーロッパ退屈日記』と『日本脱出記』
『ヨーロッパ退屈日記』と『日本脱出記』

そう、

 

伊丹十三著『ヨーロッパ退屈日記』(文藝春秋、1965年)。

20代のころの愛読本のひとつです。

 

いわれてみれば、デザイナーの本棚にもこの本がちゃんと納まっていました。

 

当代きってのスタイリストが渡欧して雑感を記したという点では、その成り立ちにも近いものがあるかもしません。

 

ただ、伊丹十三は、ヨーロッパの本格をもってきて日本の誤解をただすという文筆なのに対して、大杉栄は、ヨーロッパも日本も「悪いところばかりよく似る」という見方をしていて、好対照なのもおもしろい。

 

ぜひ読み比べてみてください。

 

 

◉大杉栄著『日本脱出記』発展読書|3冊

 

伊丹十三:『ヨーロッパ退屈日記』(文藝春秋、1965年)

大江健三郎:『日常生活の冒険』(文藝春秋、1964年)

ロバート・キャパ:『ちょっとピンぼけ』(川添浩史・井上清一訳、ダヴィッド社、1956年)

 

 

2011年

3月

18日

「何もない」日を恐れることなく

こんにちは。

いつも土曜社の動向にご注目いただき、ありがとうございます。

 

 

きょうは、余談からはじめます。

 

*  

 

思えば、遊ぶことが仕事だったころ――、

小学校で、国語の先生が日記を毎日続ける秘訣を教えてくださいました。

 

 

先生いわく、

 

 

ときに「特になし」と書く日があっても構わず日記を続けること、

とのことでした。

 

そして先生は、付け加えて、有名なルイ16世の日記について話されました。

 

1789年7月14日、バスティーユ監獄襲撃によりフランス大革命が勃発。

その日、ルイ16世が日記に記したのは、たった一言だった。

 

すなわち、「何もなし」と。

 

 

なのであるから――、

 

きみたちも、「何もない」日を恐れることなく日記をつけなさい、という先生の教えだったわけです。

 

 

現代の日記といえるブログを続けるにあたって、小学校の先生の教えが思い出されたという余談でした。

 

 

さて、つい今しがた、土曜社版『日本脱出記』を責了しました。

奇妙な巡り合わせと期待をのせて、これから印刷・製本に入ります。

 

 

追伸、

大震災で、とんでもない事態が起こっています。

非常時ですが、常識を保っていこうと思います。

 

 

 

2011年

3月

16日

「日本人で泥棒? そりゃ珍しいな」

胸が潰れるような事態が続いています。

 

 

そんな午後に、印刷所のM氏が来社し、こんなことを話してくれました。

 

「東京が経済を止めてはいけない――」。

 

東京は、いうまでもなく、日本経済のエンジンなのだから、電力を節約しながらも経済をドンドンまわさなきゃとの氏の話に、なんだか励まされてしまいました。

 

ちなみに、同氏はこんな時だからこそ、外食の頻度を増やして、財布のひもを緩めているそうです。

 

 

さて、土曜社版『日本脱出記』のことです。

 

 

本書は、大杉栄が1923年、ベルリンの国際アナーキスト大会に招待され、途中のパリで逮捕・強制送還されるというストーリーなんです。

 

 

そこで、ちょっと想像してみてください。

 

1923年のパリに、日本人は、何人いたでしょう?

 

ちなみに、外務省によると2010年は、12,512人とのこと。

 

 

答えは、435人です。

※『パリ・日本人の心象地図』(藤原書店、2004年)より

 

 

時は「狂騒の20年代」、在留邦人がぐっと増えつつあったパリで、大杉が活躍するわけです。

 

 

世界各国の同志と連絡をとる。

 

ウクライナの農民アナキズムの研究を進める。

 

キャフェでパリの女と逢い引きする。

 

『東京日日』の特派員に密かに原稿を渡す……。

 

 

「一犯一語」とうそぶく語学の天才だからこそなせる、縦横無尽の行動です。

外国の街だからという不便をちっとも感じさせません。痛快です。

 

パリの大杉栄、38歳の活躍を、どうか本書でお楽しみいただきたいという出版者からのお願いでした。

 

 

余談です。

 

当時、パリのフランス人が日本人をどのように見ていたのか、本書におもしろい記述があります。

 

「日本人で泥棒? そりゃ珍しいな。」

 

そう、日本人の高い道徳は、1923年のフランスですでに定評があったんですね。

なんとも誇らしくなる記述です。

 

 

今般の大震災でも、日本人の道徳の高さが外国メディアで報道されているようです。

なんだか、勇気が出るような気がします。

 

 

 

2011年

3月

12日

土曜社版『日本脱出記』制作快調!

東京でも余震が続いています。

 

 

さて、4月1日発売の『日本脱出記』制作が快調です。

 

ここ数日で、制作は、入稿から色校確認まで進み、あとは、印刷所に校正を戻せば、いよいよ印刷と製本の工程にはいります。

 

 

2/19(土) デザイナーと合宿

2/20(日) デザイナーと合宿

3/4(金) 束見本出来

3/5(土) 本文、ジャケット、扉を印刷所に入稿

3/9(水) 色校確認

3/11(金) 初版部数決定・発注

 

 

整理するとこれだけのことなのに、関わっているスタッフをまきこんで、結局、ぎりぎりまでもつれこみました。

 

 

原因は明白。 

自分がいろいろ注文を出すせいなんです。

 

 

でも、

 

「ふだん「ガオガオ」言っているからこそ、またベロベロじゃれあうこともできるというものです。」(吉田正樹著『怒る企画術!』より)

 

そうなんですよ。

ガオガオしてベロベロなんですよね。

 

 

追伸、

トップページのテーマは、「桜田門」と「iPad 2」。

よろしければ、苦笑してみてください。

 

 

2011年

2月

25日

特報! 大杉栄の『日本脱出記』

4/1発売予定の新刊です。

 

内容は抜群、そして装丁もかっこいいので、どうかお楽しみに。

2011年

2月

12日

関東大震災直後の驚くべきベストセラー

さて、引き続き、『日本脱出記』の制作を進めています。

 

 

本書は、関東大震災直後の驚くべきベストセラーなんです。

 

1923年(大正12年)10月25日に初版1万部で発売されると、たちまち増刷を重ね、自分の手元にある原書では、「大正12年11月5日 20版」となっています。

 

 

発売後わずか10日間あまりで、20刷というのは、まさに快挙。

 

 

震災直後で紙の調達や印刷所の確保も困難だったでしょうし、現代のような販売データ網もない時代のこと。

 

この短期間で増刷を重ねて行った版元アルスの決断には感嘆してしまいます。

 

 

そのアルスが発売直後に出した新聞広告(「読売新聞」1923年11月1日)には、こうあります。

 

「初版壹萬即日賣切増版續々出來」

 

 

土曜社版もこうありたいと思うしだいであります。

T*

 

 

大学図書館で、マイクロフィルムを操る。
大学図書館で、マイクロフィルムを操る。

2011年

2月

10日

真の芸術家は出荷する

こんにちは。

土曜社です。

 

2月に入り、引き続き、春の新刊2冊の制作を進行しています。

発売は、満を持して、4月1日です。

 

 

その一冊、大杉栄著『日本脱出記』について、進捗を報告します。

 

 

装丁の豊田卓氏から、表紙カバーのラフデザインが上がってきました。

 

じつは、先月すごいスピードで上げてもらっていたのですが、自分の手元で、出し惜しみをしていました。このへんの心理は、これまで経験のないことで、興味深いところです。

 

 

そこで思い出されるのが、「Real artists ship.」という、スティーブ・ジョブズの言葉。

日本語に翻訳すれば、「真の芸術家は出荷するのだ」とのこと。

 

 

最近、ライターやデザイナーの方々に助けられるたびに、混沌で漠然としがちな、ぼくの要望を受けとめて、かたちに仕上げて提案してくれることに感謝するばかりです。

 

 

このブログも、思い出したように時々、更新していきます。

大杉栄著『日本脱出記』(土曜社、2011年4月1日発売予定)
大杉栄著『日本脱出記』(土曜社、2011年4月1日発売予定)

2011年

1月

21日

「土曜社ウェブサイト」を開設しました。

本日、土曜社の公式サイトを開設しました。

 

デザインを担当してくれた Sさんに感謝です。

 

すてきな執筆陣による連載を企画していますので、また報告します。

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土曜社 doyosha [at] gmail.com